がんばる対象とか理由とか場所って、人それぞれだと思うんだ。でもね、わたしがここまで頑張ってこれたのはみんなのためなのに。

「ほん、ぶ……?」
「ああ、そうだ」

本部に行けと、バクちゃんはそう言った。いやいやいや、あれでしょ?本部ってあれじゃんエリート集団。なんでわたしみたいなのが。

「……ハル、君の頭は僕のお墨付きだ、心配ないだろう」

なにこの人、わたしの頭の中でも見えるのか。じゃなくて、頭以前の問題がある。そう、大いなる問題が。

「わたし、アジア支部にいたい」

バクちゃんのキレイな瞳が少し波立った。わたしってばずるい。本当はわかってる。わたしが本部に行く意味。でも言わないでよバクちゃん。そんなこと言われたら、わたし反論できなくなる。

「君が、本部でその頭脳を活かせば、新しい誰かが、救われるかもしれないんだぞ」
「……っ」

ずしん、と胃が重たくなった。わたしの頭脳?それを磨いてくれたのは、わたしを拾って、育ててくれたのは、みんなでしょう?

わたしは……わたしは、そんなみんなのためになりたいって思って。そりゃ最初は子供の、ただの仕事のお手伝いだったのに、だんだんみんな本気になって専門的な勉強を教えてくれて、ようやくちゃんと科学班のみんなと仕事できてるって……思えてきたとこ、だったのに。

喉と鼻と目の奥が、じんわり熱くなった。ばか、泣くなわたし。こんなとこでバクちゃんなんかに泣き顔見せてたまるか。
ぐい、と唇を噛んで、顔を上げればたぶん今のわたしがしてるような顔と全く同じ顔のバクちゃんがいた。

「わたし……頑張るよ、本部で」

泣き笑いみたいな、微妙な顔になっちゃったけど、それでもバクちゃんも笑ってくれて、それからちっさい頃にしてくれてたみたいに頭を撫でてくれた。

「いってきます」
「ああ……いってこい」



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