木曜日なんか、だいきらいだ。

夜の公園は思ったより怖い、そして寒かった。でも帰るわけにもいかない。土管の遊具の中に身を縮めて入りこむ。所持品は携帯と財布だけ。

財布を開いたら後悔しか見えなかった。所持金が32円じゃなにもできないじゃないか。
よく考えて行動しろって、中学の頃から何回も言われてるのに、なあ。成長しないや、あたし。


木曜日はきらいだ。
なぜなら木曜日に化学と数学と英語っていうあたしの三大苦手科目があるから。おまけにリーバは自分の授業がつまってて一週間で1番疲れてる。

お互いイライラするのは決まって木曜日で。いつもはリーバーが仕方なく許してくれることも木曜日だけは喧嘩の種。

毎週、あたしが甘えすぎなんだなって自覚しながらもそれが治らなかったのは結局いつだってリーバーから謝ってくれてたから。

なんて、今更気付いたって遅いのに。


「…ごめん、なさい」

土管の中に自分の声が響いて虚しくなって、喉の奥からなにかが込み上げてきて、そのまま目からあふれた。

冷静になればなるほどあたしが悪いという事実しか見えてこない。

家を勝手に飛び出したのもあたし。なんの連絡もなく門限破った上、怒ったリーバーに逆ギレしたのもあたし。

救いようがない。
いますぐ消えられればいいのに。

門限厳しいのだって、そんだけ心配してくれてたってことで。
門限破っても、連絡さえすればいつもは怒らないでおかえりって言ってくれるのに。


「…リーバー」

今、なにしてんのかな。
呼んだって出て来るわけでもないのに思わず呟いた瞬間、携帯が鳴った。

「も、もしもし…っ」

焦りすぎて誰からの着信かも見ないで携帯の通話ボタンを押す。

『ああ、実紅ですか?』
「…アレ、ン…?」
『ええ、今日は帰りが遅くなったので。いくらあなたが女らしさのカケラも無いとはいえ一応…って、実紅?』
「…うん、大丈夫だよ」
『どうかしたんですか?』

さっきまで自分の甘えすぎを反省していたのに、すぐこれだ。最悪だ、あたし。


携帯が鳴った瞬間、期待したんだから。

ケンカはいつも曜日


でもいつもとは決定的に違った



title:おやすみパンチ


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -