「…ただいまー」 誰もいるはずないと分かっていながら、電気のついてない暗い部屋に挨拶するのは虚しい。非常に虚しい。 電気をつけて、特に見たい番組があるわけじゃないけれどテレビをつけて。 ソファーに寝転んで携帯を開く。 「返信、しなきゃなあ…」 学校が終わったと同時くらいに受信したメールは、リーバーからの謝罪メールだった。 『悪い。今日帰り遅くなるから先に飯食ってて』 リーバーは中学の先生だから、まあ会議とか部活とかで帰りが遅くなるのはよくあることで。慣れたとは思うんだけど、やっぱり、なあ…。 …お腹空いた。 あ、今日火曜日だ。あたしがなんか作んなきゃじゃんか。 火曜日は料理が得意じゃないあたしの、唯一の食事係の日。 何作ろうかな、とか考えてたら携帯が鳴った。 「もしもーし、リーバー?どしたの」 『実紅もう家か?』 「うん」 『会議、あとちょっとで終わりそうだからやっぱ待ってろな』 「…へ?」 『飯だよ、飯。7時くらいまで…待てるか?』 「え、無理。あたしお腹へったもん」 『即答かよ!…じゃあ、6時半!』 「…しっかたない、ご飯作って待っててあげるよリーバー」 『おー、ありがとな!……って、あーもう!こんの巻き毛!ちょっと黙ってて下さいよ!』 相変わらずリナリーの兄貴に振り回されてるらしい。突然切れた携帯片手に今日のメニューを考える。 …やっぱり、あたしにはアレしか作れない。 夕飯はカレーライスの火曜日 「ただいま……って、やっぱりカレーか」 「おかえりー文句言うなら食べなくていいよー」 title:おやすみパンチ |