「いーい天気だねえ」
「おう、そうだな」

窓からぽかぽか日が射していて気持ちいい。そこに足を伸ばしてぼーっとしてたらマグカップ二つを手に持ったリーバーが隣に腰を下ろした。差し出されたマグカップを受け取る。

「あっつ!ココアあっついこれ!」
「バカ、」

や、やばいこれ舌ヒリヒリすんだけど!っていうかその本気でバカじゃねえのって顔やめてくんないかな!

「なあ、おまえ本当によかったのか」
「ん?」
「こんないい天気なのに、どっか行きたいとことか…」
「うーん、あんまりね、思いつかなくて」

そうか、と言いながらもリーバーはまだ納得してないらしい。眉間にシワ寄ってるし。まあたしかに遊園地とか買い物とか、行きたくないわけじゃないんだけど。

「こんないい天気だと洗濯とか掃除とかしたくなるじゃんか」

朝から二人で洗濯機回して掃除して洗濯物干してリーバーがお昼ご飯にオムライス作ってくれて。で、今は午後2時くらい。なんかそういう日曜日もいいかなって思っちゃって。

「それにさあ、ここなら絶対二人っきりじゃんか」
「そりゃまあ、な」

ここ一ヶ月くらい、ずっと考えてた。あたしがこれから高校卒業して大学生とかになって成人して就職して。そういう未来を想像すると、いつだって不安になる。いつまで、あたしの隣にリーバーがいてくれるのかなって。あたしはいつまで、リーバーと一緒にいられるのかなって。
で、結局あたしは、リーバー以外の人が自分の隣にいるのが想像できなくて。

家事もできなきゃいつか呆れられるかもしんないから頑張ろうって。宿題溜めてばっかじゃいつか愛想尽かされるかもって。

「…バカタレ」

ずっと一緒がいいっていう単純な話なのに、なんて伝えたらいいかわからなくて言い淀んでいたらコツンとおでこを小突かれた。

「なに焦ってんだか」
「…だって」
「オレは、おまえがここに帰ってきてくれればそれでいいっつってんのにな」
「でも…」
「それでもどーしても花嫁修業がしたいってんなら…オレだけのためにしてくれよ」
「え…、え?」

リーバーはなんてことなさそうにマグカップに口をつけるけど全くチラリともこっちを見ないし、耳が赤い。

「そ、それってさ!それってさ!」
「だーっ、うるさい!いきなり大声出すな!」
「それって…いわゆる、アレですか」
「…いわゆる、ソレだよ」

言い終わった直後リーバーは立ち上がるとあたしの飲み終わったマグカップを奪い取って台所までつかつか歩いた。
あたしはそれを追いかける。

「リーバー」
「なんだよ」
「あたしがさ、もっとしっかりして、大人になって…それでビーフシチューくらい作れるようになったら」

しゃかしゃかマグカップを洗う背中に向かって今日1番の勇気を吐き出した。

「もっかい、さっきみたいなの、言って!」

洗い物の音が止まって、手が泡だらけのままのリーバーが首だけこっちにむけた。

「…あったり前だろ、バカ」


なんにもしない曜日

「つーか、おまえビーフシチューとかハードル高いだろ」
「あ、やっぱ?でもリーバー好きじゃんか」
「…まあな(オレ、プロポーズできんのか?)」





title:おやすみパンチ


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