唐突に通話が終わって、待ち受け画面に変わる。そこに不在着信という文字が現れた瞬間いてもたってもいられなくなって土管から這い出た。
急ぎすぎておでこと土管が衝突した。けど今はそんなの気にならないくらいリーバーに会いたい。…ごめんやっぱ気になる、結構痛いんだけどこれ!
でも、早くリーバーに会いたいのは本当なのだ。いっつもぼんやり歩いてんじゃないですよってアレンに叱られるあたしが走ってんだから。

はやく、会って、謝って……ど、どうしよう!おまえなんかもううんざりだ、とか言われたら!
そんなこと考えたらまた急激に会うのが怖くなった。走っていた足も止まりかける。あー、ちくしょう都合いい足だな!たしかにそう言われるかもしんない、けど。

「(それでも、まずは会って話さ、なきゃ)…って、え?」

もう一度走り出そうとした足はまたもや止まった。

「リー、バー?」

真っ暗な視界に毎日見てるツンツン頭。あたしに気付いたのか、ずかずか大股でこっちに近付いてくる。あれ完全に怒ってるよね!自然と後ずさりそうになった。さっきまでの気合いはどこ行ったあたし!

「リーバー…その、ごめんなさ」

あたしの目の前で立ち止まったリーバーに謝ろうとした瞬間、ガッと肩を掴まれた。

「…おまえは。こんな夜遅くに。なにして…」
「っご、ごめ」

静かで落ち着いた声が逆に怖い!とか思いながら謝ろうとしたら今度は思いっきり抱きしめられた。

「り、リーバー…?」
「どんだけ心配かけさすんだよ、おまえは」
「そ、その、ごめんなさい…」
「何回電話かけても通話中だし」
「ご、ごめんなさい」
「……無事で、よかった」

耳元で小さく呟かれて目と喉と肺が熱くなる。
走りながらどうやって謝るか、何回も考えたくせにあたしの口から出るのはごめんなさいばっかりだった。

「もう分かったって。だいたいオレも厳しすぎたな。父親じゃあるまいし…ごめんな」

そう聞こえるのと同時に、ぐいっと体が離れて何泣いてんだよってデコピンされて、あたしは泣いてたのかと自分のほっぺたを拭った。

「…いっつも、甘えっぱなしで、ごめんなさい」
「…ホントにな」
「…ごめん、なさい」
「朝は起きないテレビのチャンネル権は譲らない宿題は溜めこむし料理も掃除も洗濯もろくにできない」
「ご、ごめんなさ」
「でもな…そんなおまえの迷惑被るのはオレだけでいい」
「…へ?」

はあ、とため息を一つついてリーバーが小さく笑った。

「おまえと一緒にいたいなんてオレも物好きだよなあ」
「あたしで、いいの…?」
「実紅じゃなきゃ嫌なんだって言わなきゃ分かんねえのかおまえは」
「っあたしも!リーバーじゃなきゃ嫌だ!」

うれしいとかしあわせだなあとかそういう気持ちが頭をぐるぐるして、それを思いっきり叫んだら今深夜なんだぞバカって怒られた。それでも自然と口元がゆるんでしまう。

「じゃあ、オレもおまえも、反省すべきとこは反省するってことで…」
「うん…!」

帰るぞって差し出された手をつかむ。ちょっと寒いとぼやいたらもう0時過ぎてるからなと右隣りから聞こえた。

仲直りの曜日


「おまえ明日ちゃんと起きろよ…って違うな、もう今日か」
「がんばるよ!」
「あ…そういえばあんな時間に誰と電話してたんだよ」
「ああアレンから電話かかってきて……って、あれ?」
「どうした?」
「こ、公園に携帯と財布忘れた…!」
「な、なにやってんだよ!」




title:おやすみパンチ


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