餌付け、してる気分だ。

前に一度団長の悪ふざけで朝飯を作らされたことがある。それを食った実紅は、最初こそ食べて大丈夫なのこれ、みたいな疑いの眼差しだったものの、結局ぺろりと平らげて俺の分まで食ったあげく、これからまた作ってねなんて一方的に約束させられちまった。

「おいしー!」

口の回りに米粒つけたまま、机の向かい側で嬉しそうに野菜炒めとハンバーグをかっこむ実紅を、頬杖つきながら見ている自分にほとほと呆れる。
なに素直にもっかい作ってんだ俺。

「おいしー!うへへっ」
「……そうかい」

っとに色気のねー食い方しやがって。なんか飛んできてんだけど。飲み込んでから喋りなさい。

「阿伏兎は食べないの?」
「俺ァもう腹いっぱいなもんで」

じゃあこれ全部あたしが食べていいのか!と目を光らせる実紅を見てため息をついた。
……思えば、こいつは夜兎ん中でもよっぽど食に対して貪欲だ。米だけじゃイヤだとか言いやがるし。
そんでもってよ、なんか食ってる時が1番年相応なツラすんだよな。

「……なあ、実紅」
「ん?なに?」

顔をあげた実紅の口元に、相変わらずついたままの米粒をとってやりながら聞く。

「おまえさん、次は何食いたい?」
「……え?また作ってくれるの?」
「……なんだ、いらねェんなら別に」

俺の言葉は途中で遮られた。バン!と実紅が机を叩いて叫んだからだ。……ちょっとビビっちまったんだけど。

「いる!いる!えっと……ちょっと待って!考えるからっ」

腕組みしてブツブツ言いながら考えだした実紅に、また一つため息をついた。仕事中もそんくらい真面目に頭働かせてくれりゃあいいんだ。
そう、頭の中は不満で溢れているはずなのに……あーあー、なんだって俺は今こんないい気分なのかね。


目の奥でがひかる



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