最近疲れてるんじゃないのか?

さっきすれ違いざまに云業にそう言われて否定も肯定もできなかった。いや疲れているなんてこたァあの団長のせいでほぼ毎日そんな状態だったが、今はもう一つ俺を疲れさせているもんがある。

「阿伏兎さん!団長見ませんでしたか!」

噂をすればなんとかってな。廊下の向こうからもの凄い速さで走ってくるそいつは俺の前で急停止してそう聞いてきた。
ああまたかよ。ここ一週間ほど毎日毎日、俺を見れば団長はどこですかーってそればっかりだ。根が真面目な実紅が仕事を放り投げてぷらぷらする団長を追いかけんのはいつものこった。だが最近いつもよりちっとばかし団長団長とうるさくなった気がしてならない。正直面白くなくてしかたねェ。

「……知らねェな」
「…あの……阿伏兎さん疲れてます?」

心配そうに俺を見上げてくる実紅にさらに不機嫌さが募る。……いい年こいて、嫉妬たァ俺も情けねェもんだ。

「…ん、そんなこたァねェよ」
「…っ…やっぱり、あのクソ団長のせいですよね…!」

小さく、しかしながら力強く呟く実紅は物騒なことに自分の傘をぶんぶん素振りしだした。え、なにその殺気。

「それじゃあ私はやらなきゃならないので!」

ポカンとしたままの俺に片手をあげてそう言ってまた走り出しかけた実紅のその手を掴んだ。やらなきゃ、が、殺らなきゃ、に聞こえたから……だけじゃねェ。

「なあ、お前さん最近随分と団長に構うじゃねェか」
「え!いや、そんなこと」
「あるだろ、なんでだ?」

理由はどうしても言いたくないらしい。実紅は言葉にならない声で呻くばかりだったが、俺だって折れる訳にゃいかねェ。嫌な沈黙の中しばらく待てばようやく気まずそうに目を合わせてきた。

「…阿伏兎さんが、最近どんどん疲れてる気がして」
「俺が?」

実紅はこくんと頷いて続けた。

「それはやっぱり、団長が仕事しないからかな…って思いまして、だから…」
「だから、なんだ?」
「だから、私が阿伏兎さんの手助けできたら、って…」

最後の方はほとんど消えそうな声で喋る実紅を見て思わず笑ってしまった。

「なんだ…俺のためかい」
「な、なに笑ってんですか!」

こっちは真剣なのに!と怒る実紅が傘を握りしめたのを見て慌てて謝る。そこでよく考えたら握ったままだった実紅の手を離して今度は頭を撫でた。

「悪いな、お前さんのこと笑ったつもりはねェんだ」
「へ?」
「自分に嫉妬だなんて笑っちまうだろ」

どういう意味ですか?と聞いてくる実紅に、俺のこと労ってくれるってんなら団長を追いかけまわすんじゃなくて肩でも叩いてくれ、と言えば数秒後、はい!という声と笑顔が返ってきた。

つまるところ、ったけ



title:おやすみパンチ


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