ピンポーン、という音で目が覚めた。びっくりして時計を見たら2時だった、深夜の。誰だよこんな時間に…ってまさか不審者か!やばいどうしよ怖いんだけど!

意を決してゆっくりドアの方に向かえば小さい声が聞こえた。あたしの名前を呼ぶその声が誰かわかった瞬間急いでドアを開けた。あー嫌な予感しかしない!

「静雄!」

うっわ、やっぱりじゃんか!ドアを開けたら血だらけの金髪バーテン野郎が座り込んでいた。

あたしが名前を呼ぶと、うつむいていた顔がゆっくりこちらを向く。

「…実紅、」
「大丈夫?ケガとかしてない?」

こくりと力なく頷く静雄の腕を自分の肩に回して立ち上がらせる。ごめん、とこれまた小さい声が左耳に届いた。はいはいとため息つきながらもこうして静雄に頼られるのが嬉しいなんて絶対言えない。

とりあえず静雄が重いのですぐそばのソファーまで連れてく。はい、と肩から静雄の腕を引きはがそうとしたら逆に両腕が首に回された。え、なにこれ、あれですかハグですか静雄くん。

「…実紅、俺また、殴っちまった、」
「…そっか」

とぎれとぎれに話す静雄の背中に手を回してポンポンたたいた。相当落ち込んでるっぽい。大丈夫かな、体は頑丈だけど精神的に不安定だったりするし。そんなことを考えていたら唐突に腕が離された。

「俺、本当はもうおまえに会わないでおこうと思ったんだ」
「え…?なんで…」
「俺がいつかおまえまで傷つけちまうじゃねえかって思ったら、すげえ怖くなって」
「…しずお」
「なのに…本当ダメだな俺は。こんな夜遅くに悪いって思ったのに…なのに、」

す、とほっぺたに静雄の手が触れた。

「なのに、やっぱり俺はおまえがいなきゃ、ダメなんだ」

なんて言ったらいいかわからなくて、今度はあたしから静雄を抱きしめた。

きみのそのこわごわとわたしのほおをさわるてをかんじてかなしいほどあいしたかったのはいうまでもありません


title:人魚鉢

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