最近阿伏兎の仕事がやたら多い。そしてお留守番を命じられるあたしはいつだって一人でつまらないのだ。

ある日阿伏兎と団長が帰ってきて、おかえりって言ったあたしに団長はにこにこしながら阿伏兎はまたすぐ仕事だよって。
ああもう我慢ならないぞ…!

「団長!」
「なにかな」
「最近阿伏兎の仕事多くないですか!」
「おい実紅…!」
「しかたないじゃない。忙しいんだよ海賊も」
「忙しいならあたしにだって仕事くれればいいじゃないですか!」

一人で、待ってるのが、どんだけ辛いと…!
まあ団長に女の子の気持ちなんかわかるわけないだろうけどな!くそ団長、め…!?

「い、いたい痛い、いたい!です!」
「その件について、オレが責められるのは心外なんだけどなあ」
「ちょ、わ、やばいやばいこれ!顔二つに裂けそう…!」
「……団長、」

団長に左右のほっぺたを思いきり引っ張られて本気で顔が裂けそうなところに止めに入ったのは阿伏兎だった。なんか、やつれた?……やっぱり仕事行きすぎだこのオッサン!いくら夜兎でも限界ってもんが!

「…団長は悪くねェよ」
「…へ?」
「…………」
「それ、どういう…」

ぽかんとするあたしに団長はまたにこにこ。

「阿伏兎がね、実紅の仕事を自分に回せって」
「は…?」

意味がわからなくてまたぽかん。なんであたしの仕事を阿伏兎が。
ぐるぐる考えてると、まだわからないの?という楽しそうな団長の言葉。

「阿伏兎はね、」
「団長…!」
「阿伏兎は黙ってて」
「心配だったんだよ」
「…え…?」
「実紅のことが、さ」

阿伏兎が、あたしのことを…心配?
あたしが怪我しないように、ってこと…?そ、そんなの…。

「おまえさんじゃまだ足手まといだと…」
「阿伏兎のバカタレ!」
「……なっ、」
「あたしだって…阿伏兎が心配だった!」

心配で不安で死にそうだった。なぜかあたしだけお留守番で一人っきりで待って。怪我してないかなとかどんだけ心配だったと…!

「…っ、阿伏兎のバカ!」
「…その…、すまん」
「やだ!」
「……悪かった」
「……でも、なんかそこまで考えてくれたのは…うれしいような…」
「…そりゃ、お互い様だろ」
「だからって今度こんなんしたら殴ってやるからな!」
「そいつは怖ェなあ」

いつの間にか団長がいなかった。あの人も空気読めるのかな…、って違うか。お腹減っただけだなきっと。そんなこと考えてたら阿伏兎に頭をぽんぽんされて、なんだか幸せな気がした。


遠回りでやってきた幸せ


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