朝起きたら阿伏兎がエプロンにおたまを持って立っていた。
…あれ、あたしまだ寝てる?夢の中?

「…なにしてんだ、おまえさん」
「いやいやいや…まだ夢なのかなって」

ほっぺをつねったけど普通に痛い。っていうかどうしたはこっちの台詞だよ。どうした阿伏兎。

「いや…これはだな」
「あ…わかった、団長か」
「…おう、あのすっとこどっこいはろくなこと言い出さねェ」

つまりは団長が楽しそうだからという理由で阿伏兎は朝ご飯を作らされてたのか。本当哀れなオッサンだなあ。

「あれ、じゃあ団長とか云業は?」
「もう食ってった」
「あ、そうなんだ」
「で、おまえさんがいつまで経っても起きてこねえから起こしにきた」
「あーそっか、ありがと。で、ご飯うまくできた?」
「…よくわからん」
「……そ、そっか」

ああ不安になってきた!団長や云業は胃袋だって強いからどんな劇物だって消化できそうだけど、あたしは繊細なの胃袋も!


飯持ってくると部屋を出た阿伏兎は数分後ご飯と味噌汁と焼き魚を持ってきた。
…うん、見た目は異常なし。おいしそう。
でもこれ…

「なんか、量多くない?」
「二人分だからな」
「ん…?」
「おまえさんとオレ」
「え…、待っててくれたの?」
「作って運んで片付けてたら食うタイミングが無かったんだよ」
「そっか…じゃ、いただきます」

…………マジでか、これ…。

「お、おいしいじゃんか!」
「そうか?」
「うん、すごいよ阿伏兎…!あたしより全然上手いじゃんか料理」
「おまえさんのハンバーグはゲル化してたからな」
「うるさい…!」

うん、悔しいくらいおいしい。なんだこのオッサン。なんでもできるのか…!

「ねえ阿伏兎!」
「?」
「これからもずっと、あたし阿伏兎の作るご飯食べたい!」
「………」
「え、なに、どしたの」
「いや…なんでもねえ。まあ気が向いたらまた作ってやるよ」
「やった!さすが阿伏兎!」
「…………」


主夫も悪くないかもしれない




「(なんて…、オレはバカか)」



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