誰かがあたしに、安形くんと仲よくてうらやましいなあなんてふざけた冗談を言ってたけど、本当なんていう安形への過剰評価! 今あたしの腕を思いきり掴んで先を歩く憎たらしい背中を睨むけれど相変わらずこっちなんか見もしない。どこ行くのって聞いたって無視。あたしを振り回して何が楽しいんだコイツ!そしてこんな勝手野郎のどこがいいんだか! 無駄だろうと思いながら5回目の離してを叫んだら急に安形が立ち止まってあたしの顔面は安形の背中に激突。めちゃくちゃ痛い。これ絶対鼻が背骨に当たった! 「いっ、たいなあ!急に立ち止まんないで!」 「かっかっか、わりぃな。じゃ、5時限はここでサボるか」 「うえええ!?ちょ、やだよ!安形と違ってあたし成績やばいのに」 「そんなこたあ分かってる」 「っじゃあ!一人で昼寝なりなんなりお好きにどう、ぞ…っ!?」 安形が開いたドアは生徒会室だった。だけどあたしは安形なんかとサボる気はさらさらない。 くるりと安形に背を向けて教室に戻ろうとしたら今度は頭を掴まれた。頭を掴むってどういうつもりだ。本当コイツありえない。い、痛い!ちょ、マジで痛い! 「いい痛い!痛いって!離して本当!」 「おほっ、聞こえねぇよ」 「ふっざけんなバカ安形!」 「………」 「い、いたい痛い!更に力こめんな!」 「………」 「…っ!は、離、離して、ください…!」 「なんだ離して欲しかったならもっとはやく言えばよかったじゃねえか」 コイツ…本当、机の角に頭ぶつけろ。 頭の中絶対ろくでもない…! 頭をさすっていたら安形は生徒会長の椅子に座って机をトントン叩いた。 「…ん?なに」 「ま、とりあえず化学教えてやるよ」 「はあ?」 「いや、だから成績が心配ならオレが教えてやるから」 「や、いいよ!だいたい授業聞け…ばっ!」 机から離れてドアに向かおうとしたら今度は首ねっこをぎゅ、とつかまれた。 「待てよ、この頭からっぽバカ」 「い、痛いしうざい!」 「かっかっか、ひでえなあ。オレはただ」 「…ん?」 ぱっ、と首への圧力が無くなって、振り返ったら真面目な顔した安形。 な、なんだそれ!反則だ! しばらくして安形が口を開く。 「お前と二人でサボってみたかったんだ」 「な…っ、」 「なんてな。おほっ、チャイム鳴ったぜ。サボリ決定だな」 「ッ!死ね安形!」 素直って言葉が辞書にない |