第七師団はみんな優しくないと思う。泣きたい。

今日のゴミ捨て当番は団長だった。団員の部屋とかで出たゴミをまとめて持っていく役割を、「当番とかやってみたいよね」って言い出したのは団長なのに、いざ自分の番になったらあたしに押し付けやがった。「それも当番制の醍醐味じゃない」って。本当死ねばいい。

そしてあたしを選んだ理由が目についたからってどういうことだろうか。理不尽だよね、パワハラだよね。

そんな哀れなあたしを見て見ぬフリなみんなも冷たいんじゃないかな…!ちくしょう涙が!

しかもみんな分別してないのだ。
ぐっちゃぐちゃに一つの袋に入れてる。
分別しないと上のジジイどもがまたぐちぐち言い出すに違いないのに!

「うーわ…なにこの、スライムみたいな…!」

…ありえない。
青いスライム状の謎の物体Xを発見。なにこれええ!燃えるの!?燃えないの!?
誰だよこんなん捨てたの。

「……ま、まあ燃やせば燃えるか…」
「随分適当じゃねェか」
「っぎゃあああああ!」

ありえないその2。
あたしは自室で巨大なゴミ箱とゴミ袋の前に座り込んで分別してたはず。なのに、いきなり背後から声がしたこと。

ありえないその3。
それにびっくりして軍手を重ねてつかんだ物体Xから手を離してしまったこと。
…しかも、あたしの足の上で。

これもすべてノックもせず入ってきたこのオッサンのせいだ。

「なんで!急に!入ってくるのかな!」
「怒るより先にそれ、なんとかした方がいいんじゃねェのかい」

阿伏兎コノヤロウが指差す方を見ればあたしの足の上で、ゆっくり、動く、物体X…!

「ぎゃあああ!」
「そんなにビビることかよ」
「うっえええ!?素手!?素手でいくの!?」
「まあな」
「うっわ、信じられないよ!しばらくあたしに近付かないで」
「おいおい、ひでェ言われようだな。オジサン傷ついちまうわ」
「傷ついとけ勝手に!あ…っていうか阿伏兎なんか用事だった?」

ゴミの分別に集中しながら、そういえばこのオッサンはどうしてここに来たのか不思議になった。

「団長の理不尽でゴミ捨てやるはめになった哀れな奴を見学しにぐぶ…ッ!」

とりあえず殴っといた。ふざけやがって…!みんな優しくない!悪趣味だ!

「…ちったあ手加減しやがれ」
「うるさいよオジサン」

あたしの裏拳くらいなんてことないくせに。誰が謝ってやるか阿伏兎のバカヤロウ。

分別なんか終わりそうにないゴミの山で若干泣きそうになる。
本当、団長より強い人、はやくあれ退治して。

涙目になった視界の隅からいきなり腕が伸びてきた。

「なんのつもりですかねオッサン」
「…困ってんなら素直に手伝ってくれって頼めばいいだろうが」
「べっつに困ってなんか……あるけども」
「くくっ素直じゃねェや」
「……いやでもこれ二人でも終わんないよね」
「…それを言うんじゃねェよ」
「……あぶと、」
「あァ?」
「あり、がと」
「…おう」


比較的やさしい人


title:おやすみパンチ


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