うちの学校は屋上立ち入り禁止である。
だけど三週間前、神威が気まぐれに屋上に行きたいと言いだして、屋上への扉に取り付けられた鎖や鍵を壊してしまってからは行きたい放題になってる。
ギィと重たく不気味な音をあげて開く扉の向こうで見慣れたくせ毛がふわふわしてた。

「やっぱここでサボってた…」

3時限目に阿伏兎がいなくなった。神威に聞いたら腹でもくだしたんじゃないのという答えしか返ってこなかった。
だけど4時限目もいなくて。
ふざけんなといいたい。普通の人がさぼる分には構わない。だけどアイツは別なのだ。あの九々もろくにいえないような頭の人間は授業くらい出席しないとやばいんじゃないか。

本当ふざけんな阿伏兎。卒業したいんじゃなかったの。

屋上でごろんと気持ち良さそうに寝てる阿伏兎を見つけた瞬間殺意というかなんかモヤモヤしたもので頭の中がいっぱいになった。
…こっちの気もしらないで…!呼吸に合わせて動く横っ腹に蹴りを入れた。

「おいこらっバカ阿伏兎!」
「う…っ、……実紅?」

寝ぼけた声を聞いたらさらにモヤモヤした。ふざけんなともう一発蹴りを入れたらようやく起き上がった。
起き上がった瞬間の阿伏兎のくせっ毛を掴んであたしと顔を向けさせる。

「阿伏兎はさー、そんな呑気に授業さぼる余裕ないよねー?単位は大丈夫なのかなー?」
「あーその、すまん」

すまん、じゃない。本当に、卒業できなかったら。
一緒に、卒業できなかったら。

「どう、するの…!」
「なっ、おい何泣いて…」

泣いてなんかない。なのに視界がぼやける。阿伏兎が、ぼやけてる。

「泣いて、なんか、ないし…!ああもう、なんで頭、撫でるの…!」
「…、なにオレの学ランをタオルがわりにしてやがんだ」
「うっうるさい、誰のせいだと思って…!一緒に卒業するって言ったじゃんか!」
「……本当…すまん」

本当ダメだこいつ。まるでダメだ。
…でも、阿伏兎の腕が伸びてきて、座ったままぎゅってされただけで許しそうになるあたしも、まるでダメだ。

ぐい、と阿伏兎の胸を押して離れる。本当は…そのままが、よかった…んだけども!

「……実紅?」
「…昼休み、終わる!」
「……まだあと3分あるじゃねェぐあふ…っ、おま、殴…っ」
「5時限からはちゃんと授業に出るの!わかった!?」
「おう」

阿伏兎がニヤニヤしてるのが気にくわない。屋上の重たいドアを開けて振り向けば阿伏兎があくびしてた。うざい。そのまま教室までダッシュしてたら途中で阿伏兎に抜かれた。うざい。

まるでダメなこいつと一緒に卒業するために。とりあえず三月まで頑張ってやろうと思った。


意しました上で




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