仕事が一息ついた。書類の山をなんとか三つ片付けてぼんやり座っていたんだけど、突然班長に飯食いに行くぞと白衣の襟をつかまれ立たされた。班長はもう少しかわいい部下への優しさと繊細さを学ぶべきだ。食堂であたしがハンバーグとピラフ頼んだ時も、そんな食ったら太るぞって。デリカシーって言葉を知らないのかな、班長は!


「こら」
「…な、んですか」
「野菜も食え!」
「食べてますよ…」

ハンバーグの隣に山のように積まれた野菜たち。このベジタブルな塔はジェリーさんいわく健康と栄養バランスを考えた結果らしい。ジェリーさんには申し訳ないがもう少し、量を、減らしてくれれば!自然とハンバーグばかりつついていたら突然あたしのベジタブルタワーにフォークがささった。あたしのじゃない。班長の。

「え…あの、班長?それ一応あたしの…あ、でも食べたいならどうぞむぐぐ!」

いきなり野菜が口に突っ込まれた。視線を、フォークを突き出す張本人にうつす。

「つべこべ言わずにさっさと食え野菜!!」

ほ、ほんとに優しさと繊細さを学んでほしい。しかたなく口の中でひろがるピーマンとか玉葱の味と格闘して無理矢理飲み込む。

「っは、班長!殺す気ですかあたしを!」
「大袈裟なんだよおまえは!」
「ままま待った!なんでまた構えるんですかフォークを!」
「じゃあ自分で食べれるよな?」
「なんで笑顔なんですかね!」
「だいたいおまえはそんなタンパク質ばっか摂取してどうすんだよ」
「別に肉じゃなくてケーキでも大丈夫ですよ、あたしは!」
「全然大丈夫じゃないだろ、なんだその食生活!」
「えー、二日に一食だった時期の班長よりかはマシですよ」
「あん時はなあ……って、おい!今オレの皿にニンジン入れただろ」
「…そ、んなことしてませんよー」
「いや、会話してたからってオレの目はごまかせねーぞ」
「いやいや、班長仕事のしすぎで目ェおかしくなっちゃったんですか」
「正常だ!…あのなあ、んな食生活で体調崩したら困るだろ」
「うーん。まあ仕事休めてラッキーとも言えますよね
「言えねーよ。んな理由で誰が休ませてやるかってんだ」
「班長の鬼!」
「……ったく。だいたいな、オレも困るんだぞ…おまえが体調崩したら」
「え、班長が?」
「お、おう…。その、なんだ…一応心配す………おい!ニヤニヤすんな!さっさとピーマン食え!!」


小言だって愛故



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