「──木野先輩って、」

「ん?」


うだる様な暑さのなか、今日もというかいつも通り雷門中サッカー部は練習。マネージャーの私と春奈ちゃんは、選手たちを尻目にドリンクを量産していた。


「…キャプテンが好きなんですよね?」

「な"っ……!!」



ばしゃん


「あー!!」

「す、すすすみません先輩!」


春奈ちゃんが突然変なことを言うもんだから、思わずドリンクをこぼしてしまった。へーきへーき、作り直してくるよ!と笑って、慌ててその場を立ち去った。


──確かに、私は円堂君が好き、だと思う。

前向きだし、一生懸命だし、優しいし、絶対に諦めないし…他にも色々、上げたらキリがないくらい美点はたくさんあって。

でも、他人にその話をふられるのは苦手。恥ずかしくて死にそうになってしまう。春奈ちゃんは応援してくれるみたいだし、話によると鬼道君を使って探りを入れたりしてくれてるみたいだけど……


両思いになるとか、そうじゃないとか、別に私はどっちだっていい。円堂君がサッカー頑張ってる姿が大好きだから、その後ろ姿を見ているだけで満足してしまう。だからちょっとだけ、春奈ちゃんには申し訳ない……気がしている。










パタパタと走って、ドリンクの粉を取りに戻る道すがら、コートの少し離れたところで鬼道君と円堂君が話をしていた。


…新しいフォーメーションかな?


二人の後ろを通るとき、鬼道君の口から


「……木野、……」


私の名前が出てきた気がして、思わず立ち止まる。二人とも私の存在には気付いてないみたい。


──…何の、話?


立ち聞きなんて駄目。そう思ったけど、さっきの春奈ちゃんに、今の鬼道君。もしかしたら、もしかするかもしれない……。

近くの木の影に身を隠して、耳をそばだてた。



「…で、どうなんだ円堂。」

「どうって言われたってさ……」


珍しく円堂君が困ってる。何の話をしてるの?話の核心が知りたい。何で私の名前が出たの?


「じゃあ、ずっと気付かないふりをしているつもりか?」

「!!それは、」

「だったら…円堂が動くしかないと俺は思う。…大体、お前、木野のことどう思ってるんだ?」


(!!)


ていうか二人とも練習さぼって何の話してるのよ!!声が出そうになって、慌てて口を押さえる。

顔が熱くて、動悸が激しくなる。喉が乾ききって、胸が苦しい。




──円堂君は、私のことどう思ってるの…?




聞きたいような、聞きたくないような。ぐちゃぐちゃした気持ちのまま、円堂君の答を待った。



「…俺は、………。」



──…き、聞こえない!!


肝心な部分は全く聞こえない。思わずジャージの袖を握り締めた。


「…何だって?聞こえなかった。」


と、鬼道君が言う。あの距離で聞こえないって何?でも、鬼道君有難う……。


一秒、二秒、……



円堂君は暫く黙ったまま。いやな時間が流れていく。こぼしてしまったドリンクのことを突然思い出す。円堂君、早く聞かせて──!



「…俺は、」












「──っ!俺は、木野が好きだ!!」


──!!



円堂君は半ば叫ぶように言った。…な、なんて?今、何ていった?私が、……円堂君が私を、す、……?

混乱する頭で必死に現状を理解しようとしていた私に、更に次のハプニングが起こる。




「──だ、そうだぞ木野!!」


(!!ば、ばれてる!?)



鬼道君はどうやら私が居たことを知っていたらしく。どうしたらいいか分からないけど…取り敢えず、木の影から出る。






相変わらず強い日差しがグラウンドに照りつけている。

少し離れたところにいた鬼道君は、口を弧にすると走っていってしまった。

残された円堂君の顔は真っ赤で──多分、私も同じくらい真っ赤だ。






困ったように笑った彼の笑顔を、私はやっぱり大好きだと思った。











(やったね、お兄ちゃん!)(あぁ…うまくいったみたいだな。)





+++++++++


きみに恋をした様提出。

円秋よい……!
そしてうちの鬼道兄妹またやりおった←


素敵企画有難うございました!


100913 銀璽



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