「土門──」 「何?」 「呼んだだけー」 「…あ、そ…」 こんなにのんびりした休日は久々だ。俺と土門はいつもいつも広いグラウンドで白いボールを追い掛け回しているから。 ボール以外には何も見えなくて、ただひたすらそれを白いゴールポストに入れることに夢中になる。端から見たら滑稽な話かな。 でもそんなサッカーというスポーツに取りつかれてしまったのが俺と土門な訳で。 「…見ろよ、一ノ瀬。これ、円堂達の記事だよ。」 久々の休みにだってどこかしら何かしらサッカーに触れていなくては、俺たちは生きていけなくなっているのかもしれなかった。 「アジア予選勝ち進んだんだな、円堂達…」 「やっと戦えるんだなー、あいつらと。」 楽しそうにくつくつと笑う幼なじみに、 「!何してんだ一ノ瀬、」 俺は後ろから抱き付いてしまった。 土門のほうが座高は高いから、必然的に俺は腰に抱き付くことになる。 細く締まってくびれた腰は、たとえ土門が女性じゃなくともそれはそれは色っぽく。 「何って…スキンシップかな?」 「おいおい……」 でも結局はそんな風に苦笑いして俺を許してくれる優しい土門。 いつかこいつがサッカーでもなく、俺でもなく、他の誰かや何かに取りつかれて夢中になってしまったら。俺は静かにただ土門を手放して、背中を押し出してやるつもり。 「土門…」 「また呼んだだけー、か?」 それまで、この優しい幼なじみはずっと俺の所有物。 でも、いつかっていつの話なんだろう?俺は抱き付く腕の力をぐっと強めた。それでも、細い土門はあんまりキツくないらしく、また黙って手に持っていたサッカー雑誌をパラパラめくりだした。 俺が知らない日、俺が知らない奴が、この腰に抱き付いて幸せそうに笑ういつかなんて、あんまり…絶対見たくない。 「…結婚しようか、土門?」 「はぁあ?」 また笑って許してもらえるかと思ったけど、こればかりはそうもいかないらしい。 「…冗談、」 困った顔で俺を見る幼なじみに、今は俺のものだと更にギュッと抱き付いた。 いつか、その日まで ++++++++ やさしい獣様提出。 因みにお題は『腰』腰といえば土門。 素敵企画有難うございました! |