※トリップ(KH)注意※


目を覚ますと、知らない世界に居たなんてファンタジィがあってたまるか。


「…ねぇ、大丈夫?」


そんなことが起こり得るなんて非科学的だ。ありえっこないのに、それなのに。


「君、名前は?」


そんなことが起こってしまって、脳内が大混乱しているオレ、鬼道有人。













「ユウトって言うんだ!珍しい格好してるね!」


自分をカイリと名乗るショートヘアの女の子はにっこりと笑った。


「……で、此処はどこなんだ?」



オレは気付いたら何故か綺麗な海の見える浜辺で寝っ転がっていて。髪の毛のなかに砂が入っていて気持ち悪い。


「ここ?此処は…何だろ、私たちの遊び場だよ?」

「いや……違う、そうじゃなくて。」


此処は東京のどこなんだと聞きたかった。こんな綺麗な海が東京からまだ見えるなんて正直驚く。


「トーキョー…?」


だが、不思議そうにオレを見返してくる彼女に突っ込む気が失せてしまった。薄々感じてはいたが、此処は多分オレの知っている東京じゃない。

超次元サッカーをやっているからか、最近滅多なことでは驚かなくなった。落ち着け、鬼道有人。何らかの交通手段があるに違いない。それに乗れば何とかなるはず……!


「すまない…何でもないんだ。実は早く帰らなければいけないんだが…駅とかバス停とか近くにあるか?」

「……?何言ってるの?」


そこら辺に?をばらまくカイリ。もしかしてからかわれてるのか?そう思った瞬間だった。


「お───い!カイリ───!」

「あ、ソラ!リク!」


二人の少年がこちらに走り寄ってきた。

一人は頭ツンツンの、円堂に似た感じの少年で…もう一人は、クールな感じの豪炎寺に近い感じな長髪の少年。


「紹介するね!こっちがリクで、こっちがソラ!…この人はユウト!」

「へぇ…見ない顔だな。」

「珍しい格好してるなぁ、ユウト!」


二人にじろじろ見られて何だか居心地が悪い。だがしかし、オレは帰らなければいけない。早く練習に戻りたい。


「…すまない、リク、ソラ。…此処はどこなんだ?」

「どこって……」

「島、だよな?」


そうじゃないんだ!と説明すればする程二人の顔に?が増えるばかり。どうしたものかと頭を掻いていると、カイリが突然叫んだ。


「ね!ユウトは、もしかして違う世界から来たの?!」

「、え?」

「そうなのか?!」


三人に食い付かれて、オレはおたおたと手を振る。


「ま、待ってくれ…!違う世界からってどういうことだカイリ…!」


「此処には、この島とオレたちがすんでいる本島、それから海しかない。それがオレたちの世界だ。」


リクの言葉に、さっきの考えがまた急に膨らみはじめる。


「すっげぇ!じゃ、ユウトは別の世界から来たのか?!な、どうやって来たんだ?」


ソラが目をきらきら輝かせる。


そうだ。此処は、オレの知らない別の世界。東京どころか、日本も、電車も、雷門もない、別の世界なんだ。


「私たちね…船を作って、他の世界に行こうとしてるの!」


カイリが指差す先には、大きめの筏のような帆船があった。


「ユウトのいた世界にも、行けるかもしれない。」


リクが言った。オレには、あんな船で日本に行けるのかということしか思えない。途中で難破したり座礁したりするのではないか?


「んじゃぁさ!ユウトも一緒に手伝ってくれよ!」


な!と笑うソラの顔は、オレがよく知っている円堂にそっくりだった。








だから、何とかなる気がした。不思議と不安や焦燥が消えていく。

オレはあぁ、と頷いて砂浜に一歩足を踏み出す。ザクザクと妙な感覚。そういえば、海に来たのなんて何年ぶりだか──春奈とも来てみたい。そんなことを思った。


「ユウト!こっち!」


遠くで手を振るソラ。ニコニコしているカイリ。二人を穏やかに見つめるリク。どこかで見たような、懐かしいような風景。切り取られたかのような綺麗な青空。


「───今行く!」


だから、多分、何とかなるんだ。そんな気がしている。

















「───できたっ!」

すっかり日が暮れてしまった夕方。オレ達4人は馬鹿でかい卵を運んだり、布を探したりして結局帆船を作り上げた。

「名前は──「エクスカリバーだな、オレがビーチレースで勝ったから。」…分かってるって!」


ソラがむっと頬を膨らませる。その様子がおかしくて、オレとカイリは同時に吹き出した。

「何で笑ってんだよ!!」
「…っ、いや、つい…!」
「カイリまで酷いし!」
「ふははっ…!ごめん、だってソラが子供みたいだから!」


ふざけんな!といきり立つソラを、ガキだなとリクが宥める。また吹き出してしまった。

と、カイリが何かを取り出した。


「…それは?」
「これ?これはね……お守り!」


貝をつなぎあわせて出来たキーホルダーが、夕日を受けてキラキラと光る。それは、まるで波間が輝いているようだった。


「私達三人が無事に戻ってこれるように…それから、ユウトが元居た世界に帰れるように!」


ね?とカイリが微笑む。元居た世界──…彼らとは違う、オレの世界。


「そうだな──…約束だ。」


ソラの言葉に、リクも頷く。夕日がまさに海の向こうへ沈もうとする、一瞬。


とても美しい風景。とても美しい約束。違う世界……別の……べつの……………






















「鬼道!」

目を覚ますと知らない世界に居たなんてファンタジィがあってたまるか。



オレは、病院のベッドで目を覚ました。



「……此処は、」
「──お兄ちゃん!!」

春奈が涙目でオレの手を握っている。誰だ、春奈を泣かした奴は。許すまじ……

「やっと気が付いたか!」
「円堂、」
「練習中に倒れるなんてな…驚いたぞ。」
「豪炎寺、」
「鬼道君、全然目を覚まさなかったから…」
「木野…」



本当に良かった。そう安堵する笑顔は、さっきまで見ていた鮮やかな夢の続きに似ていて、思わず笑みが零れた。


「何笑ってんのお兄ちゃん!!みんな心配したんだから!」
「あぁ……すまない、春奈。とても善い夢を見ていたんだ……」



それはあの日の約束。

夕焼けと海の淡いコントラスト。

それはあの日の大事な、約束。









(そして、決して忘れない、大切な)







+++++++

異世界様提出です。


KHなので、ディスティニーアイランドかトワイライトタウンか迷った挙げ句のこれ…残念すぎる。
KH大好き。


素敵企画有難うございました!

101031銀璽





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