裕様への捧げ物です(*^^*)
リクエストありがとうございましたvV
学園もののパラレルで、一応主要キャラは全員出演しています♪
先に申し上げますと、予想以上に長くなってしまいましたΣ(゜ロ゜;)アワアワ
その結果、1ページに収めるのが困難と判断し、前後編の2部構成にしております
(>_<;)
それでも、少しでもお気に召されたら幸いです(^^)
それでは、しばしお付き合い下さいませ
m(__)m
ここは菊智学園。
エスカレーター式のこの学園の高等部に在籍し、全生徒の模範となるべき行動を取る。そしてその全生徒の為に、より良い学園創りに全力を注ぐ。
それが『菊智学園高等部生徒会』である。
・・・・・である、はずなのだが・・・。
あつまれ!菊智学園生徒会☆
「あぁ〜!!それ、僕のチョコレート〜!
最後の1個、取っといたのに〜!」
「はっはっは〜。油断しちゃダメだよ〜、秋紀ちゃん☆」
「ずるいよ太一くん」
一日の授業を終え、それぞれの生徒が部活動や勉学等に自分の時間を有効的に使う中、ここにも学園の要とも言える活動を行う集団がいた。
書記 須原秋紀。会計 五十嵐太一。
高等部の生徒会に所属する二人は同じ1年生という事もあり、いつもこの様なやり取りをしている。
それを横目に、束になった書類をものすごい速さで処理していくのは彼らのトップ、
生徒会会長 佐伯克哉。
2年生にしてその役を担う彼は、後輩達のにぎやか振りに少々呆れ、その場を丸く治める方法を提案する。
「そんなに欲しいなら、また買って来い。
副会長が何でも買ってくれるだろう」
しかし、いきなり話を振られた当の本人は、全く意に介さない様子で冷たく言い放った。
「くだらない言い合いをしていないで、早く仕事を終わらせろ。
特にそこの二人。まだ提出されていない書類があるはずだが?」
そう言いながら、佐伯同様、手際良く仕事をこなしているのは生徒会副会長を務める 御堂孝典。
最上級生である彼は、この生徒会の実質的なまとめ役を担ってもいる。
「何ですか、御堂さん。仕事が忙しくてなかなか恋人に会えないからって、俺達に当たらないで下さい」
「・・・!・・・佐伯、君も片桐先生の所に行く予定じゃなかったのか?」
「あぁ、そうでした。
それじゃ、しばらく留守にしますから、後は宜しくお願いします」
「えぇ!?克哉さん、出掛けるの?」
「心配ないって、秋紀ちゃん。
この太一様が一緒にいてあげるから♪」
「太一くんは黙ってて!」
「ひどッ!!」
「お前達も、それぞれ呼ばれてるんじゃないのか?」
「「そうだった!
じゃあ行ってきま〜す」」
嵐が去ったような感覚の中で御堂は一つ息を吐き、また書類に目を通し始めた。
そこへ、やっと静かになった室内に控えめなノックの音が響く。
音の主に、紙面から顔を上げずに入室を促した。
ノックと同じく控えめに開いた扉から顔を覗かせた人物は、半歩進んで丁寧な挨拶の後に続ける。
「あの、御堂副会長はいらっしゃいますか?」
「あぁ、今は私しか・・・・・・克哉?」
「御堂先輩!お疲れ様です」
突然の来訪者に、御堂は腰を少し浮かせた。
今、一番見たかった笑顔。
今、一番聴きたかった声。
それを携えて、彼はゆっくりと御堂の傍まで歩みを進める。
佐伯克哉。
生徒会長と同じ名を持つ御堂の恋人。
学年も名前も同じでありながら、あの男とは正反対の性格でいつも穏やかに微笑み、自分を包み込んでくれる存在。
「お疲れ様です、御堂先輩。
あ、時間、大丈夫ですか?」
「あぁ、今ちょうど皆出払ったところだ。
珍しいな、君がここまで訪ねて来てくれるなんて」
「ずっと会えなかったから・・・。思わず来ちゃいました。
すみません、お忙しいって分かってたんですが…。すぐ帰りますから」
実際、生徒会は今とても忙しい。
それは、体育祭という、学校行事としては外せないイベントが二週間後に迫っているからに他ならない。
そのせいで、最近は二人で過ごす時間がほとんど取れない状況が続いていた。
ただでさえ学年が違ってなかなか互いの時間が合わないのに、ここの所の御堂の忙しさといったら尋常ではない。
しかし、どんなに会う時間がなくても、約束が途中でキャンセルになったとしても、克哉は嫌な顔一つすることなく、いつも御堂のことを気遣ってくれる。
近頃は遅くまで生徒会室に残っていることも少なくないが、そんな時自分に送られてくる恋人からのメールが、どれだけ心を癒してくれるか。
ほんの些細な事がこんなにも喜びに変わっているのに、今日は本人が会いに来てくれた。
それだけで今までの疲れが全て吹き飛ぶ気がする。
自分も大概 現金な人間だと自嘲して、御堂は、それでも目の前の光を今すぐに抱きしめたい衝動には勝てず恋人の腕を引っ張る。
思ったよりも相当焦っていたらしい。
少し乱暴な仕草になってしまったが、構わずに愛しい温もりを腕の中に閉じ込めた。
始めは驚いて身じろぎを繰り返していた克哉だが、彼にとっても久しいその温かさを噛み締める様に、自身の腕を御堂の背に回す。
しばらくの間、互いに喋らずただ抱き締め合っていたが、その沈黙はクスッという克哉のはにかんだ笑いで破られた。
「たくさん喋りたい事とかあったのに、こうしてると何だかどうでも良くなっちゃいました」
「私もだ。今すぐ仕事など放り出して、君とずっとこうしていたい」
「ふふっ。
お仕事、本当にお疲れ様です。
御堂先輩達が頑張って下さっているから、オレ達は何不自由なく楽しい学園生活が送れているんです。ありがとうございます。
あ、そうだ!あの、これ良かったら…。
今日 実習でカップケーキを作ったんです。
疲れた時は甘いもの、ですよね」
正直、君が毎日楽しく過ごせているのなら他の人間の事は知った事ではないが、という言葉は呑み込んで、御堂はありがとうと返した。
口元をほころばせながら恋人の好意をありがたく受け取る。
「今日も、帰りは遅くなるんですか?」
遠慮がちに質問をした克哉の顔には、うっすらと寂しさの色が浮かんでいる。
多分、本人も気付いていない位の微かな色。
自分が御堂の負担になる事を何よりも嫌う彼は、全くと言って良いほど我侭を言わない。
逆にそれが御堂にとっては悩みの種なのだが、自分を押し殺してまで想ってくれる相手がいるということが、幸せ以外の何物でもないという事も分かっている。
そんな克哉が、隠しきれない程に寂しい思いをしている事が、何よりその原因が自分という事実が御堂の胸を刺す。
「あぁ…多分、今日もしばらくかかりそうだ」
「そうですか・・・。
無理、しないでくださいね」
「すまない」
「そんな!謝らないでください!
もし早く終わりそうなら、寮まで一緒に帰ろうかなって…ちょっと、思っただけなので…」
全寮制の学園では、登下校といってもその距離はわずかなものだ。
だが、その短い時間さえも恋人達にとってはかけがえのない一時である。
特に、今の彼らにとっては。
「克哉。体育祭が終われば、暫くは大きな仕事もない。
そうしたら、二人で出掛けよう。君の好きな所へ」
「孝典さん・・・。嬉しい・・・」
二人の距離が段々と近付いていく。
あと数ミリで唇が触れる、というところで、勢い良く扉が開かれた。
「もぉ〜、大隈のヤツ、あそこまで言わなくても良いよなぁ」
部屋に入ってくると同時に不満を言い募る太一と秋紀に、内心舌打ちをする御堂と、表面に出して盛大に驚く克哉。
それを見て、太一は今までの不機嫌さは一転、花が咲いた様な笑顔で訪問者を歓迎する。
「あれ!克哉さんじゃん!!
久しぶりだね〜♪今日はどうしたの?」
「た、太一、久しぶり。
ちょっと、副会長に渡したい物があったから…」
「えぇ〜!?オレに会いに来てくれたんじゃないの〜?」
「あはは、皆忙しそうだし、オレはこれで失礼するよ。
太一、お疲れ様。
それじゃ、御堂副会長、また」
「あぁ、気を付けて帰るんだぞ」
「はい」
克哉と入れ替わりで帰ってきた佐伯と顧問の片桐の元、その日最後の会議が始まった。
「それじゃ、予算はこれで決定ってことで」
「プログラムにも問題はないから、このまま通す方向で行きます」
おおよその事柄が決定していき、本日の話し合いはこれで終わりという所で、太一が思い出したように話題を出した。
「そういや、騎馬戦の事なんですけど。
あれ、鉢巻の代わりに使いたいものがあるんですよ〜」
どうせロクな事を言わないのが分かっている会長と副会長は、話を流す方向に決めた様だが、そんな事は気にも留めず提案は続く。
「コレ、良いと思わない?」
太一が取り出したものを見て、秋紀は喜び、片桐は微笑み、佐伯と御堂は言葉を失った。
太一の手に握られているのは、紛れもなくウサギの耳。
頭に付けられる様にカチューシャ仕様になっている。
「騎手がコレ付けて戦ったら、かなり盛り上がると思うんだけど☆どう?」
生徒会のツートップは色々と諦めた様で、何も言おうとはしなかった。
唯一、会長の一言
「・・・好きにしろ」
これで全てが決定した。
1年生二人が盛り上がっている中、御堂は一人恋人の事を考えていた。
(そういえば、克哉がどの競技に出るか、聞いていなかったな・・・)
――――体育祭まで、あと少し
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