29000番目のキリ番を踏んでくださった、長谷麻紀さまに捧げます。
少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。
赤い煉瓦を敷き詰めた路地は、たくさんの靴音を響かせていた。
天気の良い午後ともなれば、城下の街は活気づいて人の通りは多くなる。
そこを初夏の風が通り抜けて、髪を揺らされた男はふと思う。
この平和が、いつまでも続けば良いと――。
しあわせな王子
「何が平和だ」
「平和だろう。争いもなく、雇用も生活も安定している。子供たちも元気に街を走り回っていた。これが平和でなくて、何だと? ・・・・これが、いつまで言っていられるかは分からないがな」
せっかく気分良く帰宅したと思えば、玄関扉を開いた途端に不機嫌な顔に出迎えられた男の名は、御堂孝典。
城下町を少し離れた場所にある彼の家は、現在、来客中である。
「そういう所は、本当に父親そっくりだ」
「もう忘れた」
「・・・そうだな。そろそろ30年になるか」
銀色の細いフレームが物悲しそうに光るのを、御堂は黙って見ていた。
そのブリッジを上げる仕草も、もう馴染みの癖だ。
「君は、まったく変わらないな」
「優秀な魔法使いだからな」
御堂の言葉に間髪入れずに返された答えも、二人にとっては決まり文句のようなものだ。
「その優秀な魔法使いが、私に何の用だ?」
「あんたに、一つお遣いを頼みたい」
ソファに背を預けて腕を組む銀縁眼鏡の男は、その尊大な態度を崩さない。
物心ついた時からの付き合いのお陰で、御堂にとっては、それも意に介さないものではあるのだが。
だがやはり、自分ももう良い歳なのだから、それ相応の対応は望んで然るべきだとも思うのだ。
「偉大なる魔法使い様は、まだ私を子供だと思っていらっしゃる。そういう事は、あの小間使いのカラスにでも遣らせればいいだろう」
「藤田か? あいつは駄目だ。知っているだろう? 魔術に関する者や物は、城には入れない」
「・・・私も、好んで王族になど会いたくはない」
魔法使いの一言で、それがただの使いではないと予想がついた御堂は、眉間に皺を寄せて拒否を示した。
「そうだろうな。・・・なら、取引をしよう。これを次期国王に届けてくれたら、西の森にある神殿の遺跡に立ち入っても構わない。どうだ?」
「・・・本当か?」
御堂の眼の色が変わった。
魔法使いが持ち掛ける取引に易々と乗ってはいけないなど、子供でも知っている事だが、この男の言葉は媚薬のように理性を溶かす。
地質学者だった父の遺志を継いだ御堂は、その性分も受け継いでいた。
目の前の男は、父親との親交が深かったようだが、結局その父も、彼の住む西の森の奥までは立ち入らせてもらえなかった。
あの神殿跡には、必ず世紀の大発見がある――そう口癖のように言っていた父の顔は、幼心に眩しかったものだ。
「お前になら、あそこへ入るのも許可してやる」
その男特有の、高慢にして抗い難い口調が、御堂の心に蔦を張る。
「・・・何を届ければいい」
そう来なくては。
男はそう言って、海色の双眸を揺らめかせながら笑った。
固く閉ざされた、重厚な鉄の門扉。
そこには、国の紋章と共に、名のある彫刻家の技術の粋が刻み込まれていた。
簡単には開かないその扉の向こう側に、御堂の目的はある。
きっちりと制服を着こなした門兵に歩み寄って、一刻ほど前に手渡された金の懐中時計を差し出した。
「王子に謁見する許可を頂きたい」
「・・・どうぞ。お通りください」
時計一つで入城が許されるのもどうかと思わないでもないが、御堂にとっては他人の家庭のセキュリティにまでとやかく言う趣味もない。
さっさと「お使い」を終わらせて、遺跡へ行く準備をしなければ。
「貴方が、僕に会いたいという学者さん?」
この部屋で待て、と指示されてからちょうど15分。
今日は、眼鏡の男によく会う日だ。
赤い縁が印象的な眼鏡を掛けた青年が、堂々とした歩みで御堂の前に現れた。
真っ白なチュニックに深海色の宝玉を胸元で光らせる男は、つつがない笑顔で客人を歓迎する。
その本人が、胸の内で溜め息を吐いているのも恐らく気付かずに。
「お初にお目にかかります。・・・ところで、私は王子に謁見しに参ったのですが」
「言っている事が分からないね。貴方が会いたかったのは、僕のことだろう? この国の王子は、僕なんだから」
どんな表情も隠してしまう仮面。
目の前の男は分厚いそれで本心を隠し、御堂に挑発的とも取れる笑みを見せた。
「こちらこそ、貴殿の仰っている意味を理解しかねます。私は王子に目通りを願いたいのです。臣民を惑わし、暴利を貪る悪魔の化身にではなく、な」
悪魔と呼ばれた男の眼が変わった。
本性を表したと言う方が正しいだろうか。
冷たく、それでいて焼けるような鋭い眼光で、御堂の瞳を喰らうように睨む。
「おかしいな。この国に、僕の魔法が効かない人間がいるっていうのか」
「生憎、知り合いに貴様よりもずっと底意地の悪い魔法使いがいてな。下等な悪魔が使う魔法程度では、痛くも痒くもない」
わざと挑戦的な言葉を選んで、相手の自尊心を傷つける。
御堂の得意とする技の一つだ。
だが、何も好きで身に着けた訳ではない。
こうでもしなければ、生き残れなかったのだ。この広い王宮では――。
「・・・と、言いたい所だが、私も、今やっと呪縛が解けたようだ。あいつが現れなければ、今でも私は貴様を王子だと思って、疑いもしなかったのだろう」
「へえ。それじゃ是非とも、その魔法使いにも会ってみたいな。今度、紹介してくれるかな。・・・いや、そんな事しなくても、僕が召喚すればいいんだ。もうすぐ、僕がこの国で一番偉くなるんだから」
「そう言っていられるのも、あとどの位だろうな。いくら国王のお身体が優れないとはいえ、万に一つも貴様が国王になる事など有り得ない。この国の王子は・・・、・・・克哉だけだ」
「そうか・・・。貴方は、あの時の残党か。臆病者の裏切り者が、今さら何を言っても滑稽でしかないね。彼もきっと、北の森で野垂れ死んでいるだろうさ」
「好きに言えばいい。もう一度私がここを訪れた時が、貴様が終わる時だ」
王子の姿をした男は、高らかに笑い声を響かせた。
御堂の背にぶつけるように、声は何度も何度も木霊する。
魔法使いからの託を握りしめた御堂は、大股で赤い絨毯を踏み締めながらその部屋を後にした。
「北の森、か」
国の四方を囲む森の中でも、とりわけ北の森は危険で恐ろしい場所だと誰もが口を揃えて言う。
御堂自身も、そこには昔、衛兵時代に入ったきりであった。
街に入れない魔物たちの巣窟となっている場所へ、討伐隊を組んで向かったのも随分古い話だ。
剣は男の嗜みである。
これも、父から幾度となく聞かされた言葉だった。
古びたアルバムの1ページを開くように、御堂は父親との思い出を捲る。
それは、かつての自分の志を覗き見ることにもなって、気恥ずかしさと失意の仄暗い色を織り交ぜながらの懐古となった。
しかし、いつまでも思い出に浸っているだけでは進まない。
御堂は腰の長剣を一度だけ触って、暗い竜の口のような森へと足を踏み入れた。
「・・・静かだな」
御堂が不思議がるのも無理はない。
そこはつい数年前まで、国でも最も危険な場所として管理されていた筈だ。
それが、入ってみれば小鳥は陽気に囀り、木漏れ日を受ける花は、妖精がドレスを翻したように咲き誇る。
向こうの方で獣の影がちらつくが、こちらに気付いても襲ってくる気配はないし、不穏な空気も感じない。
ここが、本当にあの恐れられていた森なのだろうか。
自分の記憶を疑ってしまうほどに、穏やかさに満ちたその場所を、御堂は歩き続けた。
彼の目的は一つ。
本当の王子を連れ戻すことだ。
「あの時、私が残っていれば・・・」
悔やんでも悔やみきれない過去は、しかし決して変えることが出来ない。
だからこそ、こんな所で立ち止まっている訳にはいかないのだと、御堂が一歩でも早く草道を掻き分けていこうとした時。
二人の少年が、御堂の前をまさに横切ろうとしていた。
「おい、君達」
「え、わっ、なに!?」
よく見ると容姿は全く違うが、雰囲気はどことなく同じ気がする。
野兎の双子だろうか。
御堂の声に驚きの声を上げたのは、クリッとした大きな瞳が印象的な少年だった。
クリーム色の髪が白い肌によく似合い、その表情は愛嬌たっぷりだ。
白い綿毛のようなポンチョを纏った姿も愛らしい。
もう一人、その少年よりも背が高い彼は金茶の髪を一つに束ね、足首まである枯茶のマントで身を覆っていた。
小さい少年に比べて、敵対心を持った目で御堂を見ている。
その視線の先に気付いた御堂は左足を半歩下げ、気休めではあるが、長剣を彼らの視界から遠ざけた。
「君達は、この森で暮らしているのか?」
「・・・そうだよ。もしかしてあんた、時代遅れの討伐隊?」
年長の少年から、その表情と同じ温度の声が放たれた。
「いや、違う。私は、ある人物を探してこの森に来た。・・・この国の王子を知らないか?」
「それって、かつ」
「知らない!」
それはさながら硝子細工を割るように。
静かな森の空気を叩きつける声が、小さな少年の肩を震わせた。
「あ・・・ご、ごめん、太一くん」
揺れる翡翠の双眸が曇る。
幼い顔がさらに弱いものに見えて、自身の中の庇護欲に従った御堂は静かに口を開いた。
「誤解するな。私は、彼に王位を取り戻すためにここへ来た」
「王位を・・・?」
「そうだ。魔術に囚われたあの国を、元に戻す。・・・正直、こんな事になっているなんて知らなかった自分が情けない」
「・・・分かった。ついてきなよ」
先程より幾分か柔らかくなった目つきで合図され、御堂は少年達の後を追った。
「克哉さーん。ただいまー」
苔の生えた木の根で作られたトンネルをくぐっていくと、こじんまりとした一軒家が現れた。
太一はごく当たり前に扉を開け、中で待っていたであろう人物にもう一度「ただいま」と告げる。
玄関から見えるキッチンに一人の青年が立っているのは、後に続いて入ってきた御堂の目にもすぐに留まった。
「あ、おかえり。太一、秋紀くん。リンゴはたくさん採れ・・・」
振り返った青年の顔を、御堂はよく知っている。
その声も、髪も、目も、とても懐かしい。
「・・・・・・たかのり、さん・・・・?」
そしてそれを、きっと彼もそう思ってくれているのだと確信した時、御堂の中でとてつもない後悔と歓喜が一緒くたになって渦巻いた。
「・・・もっと早く、迎えに来たかった・・・。申し訳ございません・・・陛下・・・!」
「孝典さん・・・!」
克哉は二人の少年をすり抜け、御堂に抱きついた。
御堂もまた、強くその身体を抱きしめて何度も名前を呼ぶ。
「陛下・・・、・・・克哉・・・」
「夢みたいです。もう、逢えないと思っていました」
「こんなにも大切な事を忘れていたなんて、自分の不甲斐なさが腹立たしい・・・」
「孝典さん・・・。オレは、あなたが無事で幸せに暮らせてさえいれば、それだけでよかったんです」
氷の上に立っているような言葉。
二つの視線は、互いしか映してはいない。
そんな中、白い野兎がおずおずと会話に入り込んできた。
「克哉さんは、どこか行っちゃうの?」
「秋紀くん・・・」
「克哉さんは、ここにいる方が幸せに決まってる! ここにいれば、あんな悪い奴に騙されることもなかったし、自分の家を追い出されることもない」
「太一・・・」
代わる代わる切なく揺れる瞳を見て、克哉の眼もまた苦しそうに歪んだ。
「これを、とある魔法使いから預かってきた」
心の定まらない者に、まるで追い打ちを掛ける真似をするようだ。
自分の心を軋ませながら、御堂は克哉に掌ほどの大きさの箱を手渡した。
上質な木箱は、中身が分からずとも外見だけで高価さを感じさせている。
克哉は、無言でその箱をゆっくりと開けた。
「眼鏡?」
隣で固唾を飲んで見ていた太一が、一番に声を上げた。
克哉の手には、その言葉通りに銀色の縁が怪しく光る眼鏡があった。
「奴は、何がしたかったんだ・・・?」
さすがの御堂も、呆れ混じりの溜め息を吐いた。
これが、頑なに守っていた自分の住む領域を取引材料にしてまで、渡してほしかった物なのだろうか。
しかし、顔全体に疑問符を張り付けた三人とは違い、克哉だけは全てを理解したような表情を作った。
その顔は、清々しいほどに晴れ渡っている。
「・・・孝典さん。オレ、城へ帰ります」
「克哉さん」
一気に落胆に肩を落とす二匹の兎。
克哉は、その柔らかい頭を交互に撫でて、彼らの大好きな笑顔を見せた。
「どうかな。もしよければ、二人にもついて来てほしいんだけど。それで、また一緒に暮らそう」
「・・・本当!?」
秋紀は思わず白い耳を出して、ピンと立てて喜んだ。
太一は太一で喜んではいるが、御堂の手前か、少し不満も滲ませた表情だ。
「その眼鏡は、使わないのか?」
御堂も、まだ残っている疑問を口にした。
「・・・はい。これは、オレと<俺>の・・・、いえ。なんでもありません。――さあ帰りましょう。この国を、もっと良い国にしなくちゃ」
「・・・本当に帰って来るとは思わなかったよ。克哉君」
「澤村。確かに、お前の方が魔力は上だ。頭も切れるし、一国の統率者としては、オレよりずっと相応しいかもしれない」
赤い絨毯の上。
二人の王子は、再会を果たした。
克哉が剥ごうとしているのは、一筋縄ではいかない厚い偽りの仮面。
だがその傍らに立つ御堂には、何の不安もなかった。
克哉の眼には、一切の委縮も恐怖も見えなかったからだ。
「でもオレは、この国で大切にしたい人がたくさんいる。その人たちに、幸せになってほしいから・・・いや、違う。オレが幸せにするから。お前じゃダメなんだ。オレが、大好きなこの国を守る」
「・・・それが、王族のエゴなんだよ。大した力も持たない癖に、言う事だけは立派だ。本当に出来るのか? そんな貧弱な魔力で。貧相な身体で」
「そうだ。オレは名前だけの王子だった。だから変わろうと思った。今は一人じゃないから。太一や秋紀くんも、一緒にいてくれる。・・・孝典さんが、傍にいてくれるだけでオレは」
「俺も忘れるなよ」
吹くはずのない室内に、一陣の風が抜けた。
どこからともなく現れたのは、黒いローブに身を包んだ銀縁眼鏡の男だった。
「・・・結局、眼鏡は使わなかったんだな」
溜め息と同時に克哉の顔を覗き込んだ男は、すぐにその楽しげな貌を澤村に向け直した。
「残念だったな、澤村・・・・という名の悪魔、だったか? もうお前に勝ち目はないぞ」
「そう、みたいだね。せっかく美味しいカモを見つけたと思ったのに、台無しだ」
「一つだけ・・・訊きたい事がある」
それまで沈黙を守っていた御堂が、言葉の端を発した。
「貴様の目的は、本当にこの国の乗っ取りか?」
「それは、どういう意味?」
「国を奪おうと思えば、もっと合理的で悪辣なやり方が、いくらでもあると言っているんだ。貴様は、本当は・・・」
「はっ! 実に人間らしい考え方だね。克哉君には、玩具にしやすそうな奴がいたから手を出しただけ。この国も、ぬるい平和に浸ったボケた人間達が滑稽で仕方なかったから、徐々に苛めてやろうと思ってただけの話だよ」
「言いたい事はそれだけか?」
銀縁の眼鏡の奥が、鋭く射抜くように澤村を睨みつけた。
御堂の右手も、いつの間にか腰の剣へと伸びようとしている。
「澤村。オレはもう逃げない。だから、今度もしこの国に踏み入ったら、オレはお前と闘う」
揺るぎない眼光は、彼が今まで見せていた色のどれとも違っていた。
「・・・その言葉、覚えておくよ」
仄暗い笑いを一つだけ残して、澤村は消えた。
それは、とても呆気ない幕引きだった。
だが彼らに、その余韻に浸っている暇はない。
「これからが忙しくなりますね。太一、秋紀くん。よろしくね」
「克哉さんのためなら、オレ頑張っちゃうよ!」
「僕も、頑張っちゃうよ!」
「ありがとう。それじゃ、まずは城の窓を全部開けてきてくれる? このジメジメした空気から替えないとね」
「は〜い!」
競走とばかりに駆け出す二人を見送って、克哉はあれ、と周りを見渡した。
「<俺>・・・?」
いつの間にか姿を消していた男に、克哉は分かっていたよと言うように苦笑した。
それを見ていた御堂は克哉の傍に歩み寄り、静かに問い掛ける。
「もし君があの眼鏡を掛けていたら、彼が王座に就いていた、ということか」
「そうですね。あいつは、オレと違って永い時を生きています。あいつにとってオレは、まだまだ手の掛かる子供なのかもしれません。だから、眼鏡を寄越してまで、入れ替わってくれようとしていた。オレを、国の主という立場そのものから抜け出させようとしてくれていたのかもしれません」
「・・・君が、自分の立場に苦しんでいた事は知っていた。知っていながら、私は君に君主である事を強要して、あまつさえ自分はそこから逃げた。・・・・すまな」
「孝典さんは、何も悪くありません」
御堂の言葉を遮って、克哉は言葉を紡いだ。
御堂の形の良い唇に人差し指を当てて、柔らかい笑顔を見せる。
「騎士隊の上層部で起っていた内紛に、自分だけを犠牲にして解決してくれたんでしょう? それを、王やオレにも黙っていたのは、国を守るためだったんでしょう?」
「・・・・・・」
やはり彼は聡い。
感嘆と、きまりの悪さとで赤くなる頬を隠すように俯くが、克哉はそれを微笑みながら阻止してきた。
小さな仕返しのつもりで、御堂はあえて克哉の眼を真っ直ぐに捉えた。
「国の為・・・は、大義名分だ。私だって、君の幸せより先に望むものなど無いのだから」
「・・・そういう事を正面から言われると・・・恥ずかしい、です・・・」
「何を今さら。大勢の前で、あんな大胆な告白をしてくれたくせに」
「こっ、こく、はく・・・なんて・・・オレはただ・・・」
「ああ、すまない。あれは惚気だったな」
「っ! た、孝典さんのバカっ」
「そうだ。君に関しては、私は大馬鹿になる。だから克哉」
ずっと一緒にいてくれ。
そう言って触れられた唇は、とてもとても熱くて甘かった。
こうして王子は、その後も大切なひとや国を守りながら、そして大切なひとに守られながら、いつまでも幸せに暮らした。
⇒あとがき
⇒小説