白い悪魔の杞憂
「ふ〜んふふ〜ん、ふふ〜ん、ふ、ふ、ふぇ〜」
「最後がおかしい」
「ふぇ!?」
夕飯の準備をしていた私の後ろで、何が面白いのか、私の手元をずっと見ているアルパカ、もとい克哉は、機嫌良く鼻歌を披露していた。
慣れとは恐いもので、そんな事が毎日続いていると、その歌がだんだん心地の好いものになってくる。
時々、獣の鳴き声が挿入されるのが玉に瑕だが。
「ほら、こっちは出来たから、持って行け」
「はい」
楽しそうに食卓に皿を並べる彼は、突然、思い出した様に声を発した。
「み、御堂さん!大変です!」
「どうした!?」
その慌てぶりに、私の背筋も思わず伸びる。
振り向いた先には、悲しげに潤む瞳が私をじっと見ていた。
「これ、大吟醸じゃなくて、吟醸でした・・・」
項垂れる克哉が話しているのは、今日、出掛けた先で購入した、土産の日本酒の事だった。
「・・・アルパカは、水で十分だ」
「あ、ひどい!」
嘆く克哉から瓶を取り上げ、コップには麦茶を注ぐ。
「・・・これは、今すぐに飲むのは勿体無い。あとで、ゆっくり堪能するぞ」
「・・・はい!」
こちらの顔は見せずに、柔らかい髪をくしゃりと撫でた。
アルパカ克哉、再臨(笑)
日記に掲載していたものですが、反響があったようで嬉しい限りです。
これは本当にシリーズで書いてみたいな〜と思っているので、また日記なんかにもちょこちょこ出せればと思っています。
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