「孝典さんは、いつ頃まで信じてました?サンタさん」

12月24日。
御堂の誘いで食事に出掛け、帰宅した後はソファで寛ぐ。
カレンダーの神様が味方し、今年のクリスマスは3連休の最終日。
明日も二人で過ごせるかと思うと、克哉の気持ちは高揚し通しだ。
会話の話題も、この時季ならではのものになってくる。

「はっきりと覚えてはいないが、小学校低学年くらいまでは信じていた気がするな」

「あ。じゃあ、オレと同じくらいかも。こういうのって、友達の話なんかからでも、だんだん分かってきちゃいますよね」

懐かしいなと、苦笑しながら話す克哉を、御堂もまた微笑みながら見つめた。

「たまたま、親が枕元にプレゼントを置くところを見ちゃったんです。
ふふっ。その時、ああ、父さんがサンタさんだったのか・・・って」

「かわいいな」

「こ、子供の頃の話ですよ」

赤く色付く頬に手を添えて、御堂は克哉の横髪を梳く。
そこに自身の手を重ねながら、克哉は、御堂さんはと続けた。

「何がきっかけで、サンタさんの事を知ったんですか?」

「私は・・・。親だな」

瞬きを一つして、克哉は小首を傾げた。

「親・・・?ってことは、オレと同じで、現場を見てしまったとか?」

「いや。面と向かって、サンタクロースは自分達だったと、告白された」

「そ、それは・・・。珍しいパターンですね」

「そうか?」

「それで、孝典さんはどんな風に答えたんですか?」

「号泣」

予想しなかった一言に、克哉は思わず言葉をなくしてしまった。

「号泣、ですか・・・」

「言っておくが、子供の頃の話だからな」

フイと顔を逸らした御堂の横で、克哉は肩を震わせた。

「ふ、ふふふ・・・」

「克哉。何を笑っている?」

「え、いいえ?」

克哉は努めて平静を装ったが、すぐにその顔は崩れてしまう。

「ご、ごめんなさい。でも・・・だって、孝典さん、か、かわいくてぷ!?」

「それ以上言ったら、怒る」

急に伸びてきた手が口を塞ぎ、克哉は軽い酸欠を覚えた。
すでに怒っているじゃないかという反論は、大きな手に阻まれて、克哉は目をパチクリさせるばかりだ。

先程の克哉同様に染まった、恋人の頬。
それを隠すように逸らす御堂の顔を、克哉は両手で捕まえた。
やっと自由になった口で、克哉は、よかったと零す。

「とても素敵なクリスマスプレゼントを貰っちゃいました」

唇に熱を重ね、御堂の瞳に自分を映す。

「では、私の用意したものは要らないんだな?」

意地悪く笑うのは、早くも形勢を取り戻した恋人。

「そ、それはまた、別問題です・・・」

絡んだ指先から互いの鼓動が伝わってくるようで、二人だけの時間が続く事を、天に舞う雪だけが見ていた。


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