Morgen Engel
克哉が目を覚ますと、隣では端正な顔が、安らかに寝息を立てていた。
少しだけ身を起こし、まだ眠っている恋人の髪を優しく梳く。
少し寝乱れた髪に、長い睫毛。
通った鼻筋も、綺麗な唇も、どれをとっても完璧に整っている。
しかし今、克哉の目に映るのは、普段は見ることの出来ない無防備な寝顔。
安心しきって眠るその顔が愛しくて、抱き締めたくなる。
起こさぬ様に、静かに柔らかく頬に触れた。
「・・・綺麗だな・・・」
頬を撫でながら吐いた溜め息と共に、零れた一言。
窓から降る朝陽に照らされた貌は、息を呑むほど美しかった。
真っ白なシーツに包まり、まるでそれは
「天使みたい・・・」
「・・・・・ぷっ」
「な・・・ッ!!た、孝典さん、まさか、起きて・・・!?」
「あぁ。今さっき、な。それより、その続きを聞きたいんだが。勿論、褒めてくれてたんだろう?」
「うぅ〜・・・。それは、そうですけど・・・」
まさか、今までの仕草も声も、全て恋人である御堂には伝わっていたのだろうか。
そう考えると、さっきまでの事が急に恥ずかしくなり、克哉はシーツに包まってしまった。
そんな彼に、御堂はシーツの端を掴んで、顔を覗き込む。
「拗ねるな。嬉しかったんだから。その・・・まさか、天使と言われるとは・・・」
また笑いを込み上がらせる御堂に、克哉は真っ赤な頬を膨らませた。
「だ、だって!そう思ったんだから、仕方ないじゃないですか。孝典さんが・・・綺麗すぎるからダメなんです・・・」
全く言い訳にならない言い訳を口籠もり、さらに赤くなった顔が、俯いていく。
「分かった分かった。そこまで褒められると、照れてしまうな」
「あ〜!まだ笑ってる!」
「笑ってないから、こっちに来い」
優しく微笑まれれば、抵抗など出来るはずもなく。
腕を引かれるまま、身体は自然と恋人の胸に寄り添い、腕の中に納まってしまった。
「まだ早いから、もう少し眠ろう」
「・・・はい」
先程とは逆に、御堂が克哉の髪をゆくっりと撫でる。
気持ち良さそうに目を瞑った克哉は、そろそろと腕を伸ばし、それを恋人の腰に回した。
やがて聴こえてきた穏やかな寝息が、御堂の表情を甘いものへと変える。
「私にとっては、君が天使だがな」
柔らかい髪が掛かる額に口づけ、だが、と言葉を続ける。
「君にはこんな事、言える筈もないが」
色付いた頬を隠す様に恋人の髪に顔を埋めると、御堂もまた、瞼を閉じた。
⇒あとがき
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