そうして、購入した本を読み込む事、1週間。

粗方の事は覚え、いざ対局となった訳だが

「それ、ポンです」

捨てた牌を自分の手元の牌と合わせて、克哉が持ち牌の横に三つ提示する。

そして、山から牌を取り、並べ替えると宣言した。

「ツモ。また、オレの勝ちですが・・・。あ、あの風邪引きますし、そろそろ」

「まだだ。私から、三枚脱がしただけだろ。いいから、続けるぞ」

シャツを脱ぎ捨て素肌を露顕させ、睨む場所は一糸乱れぬ恋人。

脱いだシャツの下には、ネクタイとベストが沈黙し、身体に纏う鎧は、ベルトにスラックス、靴下のみ。

『脱衣麻雀ですか!?』

『ああ、今夜はリスクが高い方がいい』

『・・・オレはいいですけど、大丈夫ですか?』

「あの・・・。それ、ロンです」

「・・・」

今なら言える。

(・・・過去の自分を、殴ってやりたい)

自分の機嫌を伺う克哉が、眉尻を下げて、あのと声を上げる。

それに視線を渡すと、もうと続けた。

「止めませんか?オレ、あんまり、その・・・。麻雀、好きじゃないし・・・」

「・・・?」

「それに、そろそろ寝ないと・・・。だから、ね?」

いきなり場を崩し始め、克哉が麻雀牌を片付けていく。

制止する為、腕を取れば、泣きそうな顔が垣間見えた。

「急に、どうした?」

「・・・何でも」

「ない訳ないだろ。そんな顔をして・・・」

潤んだ瞳で見詰められ、もしかしてと思う。

私が負けて怒っていると、克哉は考えている?

「・・・言っておくが、私は怒ってないぞ?負けたとしても、勝負は勝負だ。寧ろ、ここまで来れば、君の強さが凄くて、感嘆な声を上げたい気分だ」

「・・・。本当ですか?あんなにも、麻雀の本を読まれてたのに?」

「知って!?」

「いましたよ。コソコソ隠すから、オレがどれ程、不安だったか。さ、孝典さんが怒ってないなら、続けましょうか」

崩した山場を綺麗に整備し、新たな牌が手元に配られる。

鳴いた烏がもう笑う様子で、不敵な笑みで手元の牌を確認していた。

「・・・」

「言っておきますが、この1週間分の不安のツケは、払って貰いますよ?」

「・・・上等だ。逆に、私を馬鹿にした分を、払わせてやろう」

ネクタイのノットに指を引っ掛け、克哉のを軽く緩める。

そしてシャツの第一ボタンだけ外すと、首筋を指先でなぞった。

「ただ、脱ぐなら、今の内だぞ?」

「・・・脱ぐのは」

その指を捉えられ、克哉の頬に当てられる。

熱を帯びる桜色が、少しずつ色を濃くしていく。

「対局が終わった後に」

そうなれば、さっさと負けるのも悪くない。


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