最終的に
御堂孝典33歳。
「はい。それ、ロンです。・・・やった!オレの勝ち」
語尾にハートマークを付けそうな程、上機嫌な恋人を前に、思うように揃わない麻雀牌を睨みつける。
「孝典さん。弱いですよ?これだと、ボロ勝ちできますし」
「・・・もう一局ある。まだ・・・、無理か。クソッ、勝手が違うとゲームの腕が狂うな」
「ふふっ。そういう事にしましょうか。あ、でも罰ゲームは、して貰いますからね?」
ちょいちょいと台所を指差され、分かってると重たい腰を上げる。
洗い物と言う罰ゲームを貰う横で、鼻歌混じりに簡易に敷かれた雀卓を片付ける恋人。
「それにしても、孝典さんが几帳面な人で良かった」
(クソッ・・・。今度、本多には礼をしてやる)
恋人から屈辱を味わう、33歳の秋。
彼の友人から貰った麻雀セットに、隠れて舌打ちをしていたのは、自分しか知らない。
「・・・大量にあるな」
思わず呟けば、本屋の棚にある一冊に手を掛ける。
題名は『絶対に勝てる!麻雀必勝法』
ペラペラとページをめくると、初歩的な事からマニアックな事まで説明されていた。
「麻雀牌は、並べ直さない方がいいのか・・・」
麻雀慣れしてる人だと、それだけで何の牌を集めてるか知られるらしい。
『孝典さんが、几帳面な人で良かった』
つまり、克哉はあの言葉で、私を馬鹿にしていた訳だ。
「・・・絶対、後悔させてやる」
復讐と言う名の、対抗心。
今度、ボロ勝ちするのは私だと、内心で策を練り始めた。
勝つのはどっち?
佐伯克哉 or 御堂孝典