Il sorriso dolce


守りたいモノがある。

それは他人から見れば、小さな事かも知れない。

けれど、自分に取っては、多大なモノで、とても大切なモノを。



Il sorriso dolce.
(君の笑顔が愛しい)



あまり知られていないが、普通の日常を繰り返す事が一番難しい。

幸福と不幸は隣り合わせで、誰かに取って幸せな事でも、誰かに取っては不幸せな事になるのだ。

例えば、佐伯克哉が私の恋人になった事で、彼に想いを寄せていた者達は、一時でも悲しみに暮れたかも知れない。

不確定要素が多いが、彼に好意を寄せ、一人涙した輩が居た。

それは彼の親友で、克哉はその事を知らない。

知らないでいてくれた方が、私としても助かる。

何故なら、いつも克哉の背を、切ない瞳が見詰めているのだから。

「御堂部長?この書類で通して、大丈夫ですか?」

「ん?ああ、構わない。君の作成した書類なら、すぐに提出しても大丈夫だ」

「・・・。何か、ありました?」

何かを見透かすブルーの瞳。

ここで、何も無いと言うのは容易い。

しかし、このブルーの瞳に憂いを宿らせては、本末転倒である。

「君は・・・、私を選んで良かったのか?」

書類を抱えた指先に触れると、赤い顔を俯かせてズルイという言葉を放つ。

克哉の二の句を待てば、指先を絡ませて私に告げた。

「オレは、あなたがいいんです」

「・・・」

「だから、離さないで・・・。本当に、あなたから離れたくない・・・」

指先が強まり、儚い約束の様に小指が繋がる。

「すまないな・・・。君を離したくないのは、私の方だ」

知らない誰かが傷付こうが、知っている誰かが傷付いても

「だから、今日は泊まっていけ」

「ふふっ。はい、分かりました」

この笑顔を自分の傍で、守り愛したい。

いつも、いつまでも、ずっと、永遠に。




捧げ物として描かせて頂いたイラストの御礼にと頂いた、素敵すぎる小説なのですが…。
寧ろ、御礼を申すのは私の方です。
白夜さん、この度はお忙しい時にも関わらず、この様に素敵なお話を、本当にありがとうございました!
御堂さんのちょっとした葛藤に少し切なくなりながらも、「本当に、その手は離さないでね、御堂さん!」と心の中で息巻く自分がいたりして、何度も拝読しました。
こんな風に、少しずつ色々なものを乗り越えながら幸せになっていく二人を、いつまでも見ていたいです。
それでは白夜さん、今回もとても素晴らしい小説を、本当にありがとうございました!
これからもどうぞ宜しくお願い致します。


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