つまり、全てを愛してる


恋人の顔と性格、どちらが好きかと問われれば、迷わず性格と答える。

謙虚で思慮深く、優しさで出来ていると言っても、過言ではない恋人。

なのに、只今、絶賛、喧嘩中。

「もう、堪忍袋の緒が切れました!孝典さんが謝るまで、一緒に寝ません!」

「勝手にしろ!君が泣いて謝るまで、私も寝室に入れないからな!」

「っ!!孝典さんのバカー!!」

と、パタパタとスリッパを響かせて、克哉が向かった先はトイレ。

それを眉間に皺を寄せて見送ると、小さく自分に悪態を吐いて頭を掻いた。

喧嘩のキッカケは、何を隠そう克哉のパンツだ。

廊下に一枚落ちていたのを拾い、何を思ったか広げた。

『安物か』

そして、そのボクサーパンツ片手に、克哉の姿を探す。

見付けた所はベランダで、鼻歌混じりに洗濯物を干す克哉へ声を掛けた。

『落ちていたぞ』

『えっ?あ、すいません。ありがとう、孝典さん・・・。ってオレ、パンツ落としてましたか・・・』

受け取ったはいいが、恥ずかしのか茶化す様に私に聞く。

『これで、変な事してません?』

多分、この時の返事を間違えた。

『君じゃあるまいし、ただの布切れに何も感じない』

深い意味としては、布切れを纏う中身が欲しいと思っていた訳だが、言葉足りずで傷付けた。

『それって、またオレが淫乱だと言いたいんですか?』

後は転がる勢いで、ああ言えば、こう言うを繰り返し、最初に戻る訳だ。

「・・・」

そんなこんなで、閉ざされたトイレの扉。

篭城するには打って付けの場所の前で、軽く拳を握り締める。

(・・・だが、待てよ。謝罪しても、彼は気が済むのだろうか?)

寧ろ、また要らない考えをして、後々に響くのではと思い悩む。

もう一度、克哉と会話をする為に、握られた拳。

(・・・有り得る)

数秒だけ考えを巡らせ、何かを諦める様に拳を開いた。



けれど篭城したまま数時間が過ぎ、夕刻になってもリビングに現れない。

なので、トイレの前でウロウロと歩き回り、謝罪すべきか、続行すべきかを迷っていた。

喧嘩は両成敗と言うが、果たして聞く耳を持ってくれるかどうか。

「その前に、何て言う?下着だけでは欲情しない、君の身体で欲情する?・・・バカ丸出しじゃないか」

ガシガシと髪を掻き崩し、今一度、頭を整理する。

「君が着用して、初めて情欲を感じる?その前に、真剣な顔で言えるか・・・。こんなの、マヌケ過ぎる・・・」

乱れた髪を手櫛で直し、まだ開かない扉を見詰める。

(クソッ・・・。30にもなって、こんな事で悩むなんて)

しかし、それを選び、これを楽しむ自分が居るのも事実としてある。

自虐的に笑いを零し、潔く扉をノックした。

案の定、返事がなく、苦笑と共に克哉へ告げる。

「克哉。本当は、君の全てに欲情する」

震える睫毛も、情欲に濡れた蒼い瞳も、自分を求める赤い舌も。

「君の身を纏う空気すら、私には甘い毒の様に感じる。だから、それを隠す衣服に興味などない」

鎧の様な衣服を脱がせば、彼の全てが、自分を蠱惑的に誘惑してくる。

それが一番、自分の本能を駆り立てると、彼に言いたい。

『・・・』

「・・・これで、満足か?」

しばし沈黙が続き、カチャリと鍵が開けられる。

ホッと胸を撫で下ろせば、トイレから出て来たのは想像と違う恋人だった。



想像では赤い顔して、自分に擦り寄る恋人。

けれど目の前に居るのは、眉根を寄せて口を引き結ぶ恋人。

「克哉?」

「孝典さん。オレは、バカでマヌケで、どうしようもない淫乱ですけど」

「・・・」

そして溜めに溜めて、克哉は一気に吐き出す。

「でも身体はちゃんと洗ってるから、臭くないです!!」

「・・・はぁ?」

「オレの空気が毒とか、挙げ句に興味ないとか!酷過ぎます!!」

バタンと扉が閉まり、またもや篭城する恋人。

「・・・人の話は、外に出て、キチンと聞け!!!」

変に厚みがある扉の所為で、恥ずかしい言葉が伝わらず、色々と都合が悪い所だけ伝わり

結局、仲直りするまで、克哉の要らない考えと同じ、要らない時間を要し

「・・・克哉、謝るからいい加減に出て来い」

『だったら、オレの下着を見て、どう思います?』

「分かった、分かった。見たら、したい気分になる」

『・・・何を?』

「・・・。わざわざ私に言わせるのなら、後で覚えておけ。泣こうが喚こうが、代償を払わせてやるからな」

今日も、矛盾を愛してしまう。




こちらは、『世界の最果てで見る夢
の白夜様から、相互リンクの記念として頂いた小説ですv

今回リクエストさせて頂いたのは《御堂×克哉》で「ギャグ」。
夜中に拝読している最中、異様なテンションで笑い転げていた自分は、大丈夫、主観的に見ても危ない人でした( ´∀`)b

カッコいい部長は最高に素敵ですが、パンツに翻弄される部長も、なんとも素敵ですね(本気の目)
私は自分で思っていた以上に、御堂さんを「バカ」と罵るノマちゃんが好きみたいです(笑)
その去っていく背中さえも愛しいぞ、こんちくしょう!(>ω<)
あ、それを追いかけるのはもちろん私ではなくて御堂さんなんですけどね。

この後、結局は仲直りして、らぶっちゃう2人が目に浮かびます。
ノマちゃん、今度から洗濯の時は気を付けようね(笑)

と、訳の分からない事まで書いてしまいましたが、白夜様、この度は相互リンクだけでなく、この様な素敵すぎる記念小説を本当にありがとうございました!!!
不束者ではありますが、これからもどうぞ宜しくお願い致します!!


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