(おまけ)

あれから数日経ち、なまえはすっかりマネージャーとして溶け込んでいた。
あの日、自分のことを『愚図』やら『鈍間』やら『役立たず』やら言っていたが、よくもそんなことが言えたなと過去に戻れるなら言ってやりたい。亮介はよく動くなまえに対して常々そう思った。
惜しみない笑顔を振りまき、通常のマネジメントに加えて選手達のフィジカル面も調整して。しかもどんな練習方法が良いかまでアドバイスしてくれる。こんなマネージャーはきっと他校にも早々いないだろう。
だが、それを面白くなさそうに見つめる男が一人いた。


「………」
「っと……うわっ!? か、一也くん!? こんなところで何してるの!」
「……きゅーけー」
「休憩って…監督に見つかったら怒られるよ?」
「なら、なまえもここで休めばいーじゃん」
「もー、そんなわがまま言わないの……って…」


「ぎゃ!」と色気のない悲鳴が口から漏れる。気づけばなまえは御幸の上に重なるようにして倒れていた。御幸がなまえの手を引っ張ったのだ。


「かーずーやーくーん……?」
「ふはっ、これでなまえも共犯だな。」


意地悪な笑みを浮かべ、御幸は心底楽しそうになまえの目を下から見つめた。こんなイケメンに至近距離で覗き込まれれば、ドキッとしない方がおかしい。
してやられた感に、なまえは顔を赤くして、のちにゴチン! と御幸の頭めがけて頭突きした。


「いっ〜〜〜!」
「ははっ、そっちが痛がってんじゃん」
「この石頭……!」
「ほめ言葉どーも」
「褒めてない!」


端から見ればただイチャイチャしてるようにしか見えない二人の元に、魔王(亮介)が来るのももうすぐだ――。