(おまけ)


トラファルガー・ローと海賊同盟を結んだ麦わらの一味は、次なる島、ドレスローザへと向かうべく船を走らせる。


「なァなァ、これで魚釣れるかなァ!!」
「ルフィ…それゾロのダンベルじゃ…」
「それで一発、大きいの釣り上げようぜ!!」


甲板にドーン! と置かれていた大きなダンベルをルフィがひょいと持ち上げ、今にも海に投げようとウソップと騒ぐ。そんな光景をローは日陰で眺めていたが、ふと上からゾロの声が降ってきて目をそこへ向ける。


「おーい! お前らおれのダンベル知らねェかァ?」
「うわっ! やべェ!!」
「ってそれおれのダンベルじゃねェか!! なまえ、寄越せ!!」
「はーいはい、ウィンガーディアム・レビオーサ


杖をひょいと振って呪文を唱えれば、重たいダンベルは瞬く間にふわふわと浮き、ゾロの元へ。「サンキュー」と満足そうに礼を言ったゾロは再び姿を消したのだが、ルフィ達はなまえに文句をブーブー言っている。


「何すんだよなまえ!! せっかくおれがアレでスッゲーでけェ魚を釣ろうと思ってたのによー!!」
「ダンベルは釣り道具じゃないでしょ! それより…サンジくん、デザート食べたい! 紅茶付きでお願いします!」
「ン喜んで〜〜〜!!!」


回転しながら厨房へと入って行ったサンジに、「おれもおれも!!」と駆け込むチョッパー。
今度はきちんとした釣り道具で釣りをし始めたルフィ達の側で、海を眺めながら座り込むなまえ。そこへローはあり得ないものでも見たかのような声色で話しかけた。


今のは何だ…!!
「わっ! え、なに…?」
「何だァトラ男! ダンベル知らねェのか?」
「そこじゃねェ!! 今の奇妙な技は何だ!!」
「奇妙? あ、魔法のこと?」
「そういやあお前知らなかったな、なまえのこと。パンクハザードでは一緒に行動してなかったしな」


そう、ローが驚いたのは魔法だ。この一味ではすっかり日常の一部になってしまった為、まったく驚いてはいなかったのだがローは違う。ローだけじゃない、錦えもんやモモの助も声が出ないくらい驚いている。


「わたし、魔女なの」
「魔女……!?」
「そ。異世界から来たんだけどね、帰る手段が無くて…。もうどれくらいここにいるだろ? 分かんないや」


あははー、と軽く笑うなまえ。するとルフィが釣竿を壊してしまった。真っ二つにぽっきりと。どうやら大きい魚が食いついたらしいのだが竿が負けてしまったらしい。


「あーもー、すぐにポキポキ折るんだから。レパロ


壊れた釣竿に杖先を向ける。するとたちまち釣竿は元どおりに戻った。
その様子をキラキラした目で見ていたルフィは、戻った釣竿に感激しながらまた魚釣りを再開する。


「……思ってた以上に強者揃いだな、この一味は」


なまえという思わぬ切り札にクッと口角を吊り上げたロー。きっと今から戦う相手、ドンキホーテ・ドフラミンゴも知らないだろう。
勝てる兆しが出てきた事に、ローは見えてきたドレスローザをキッと睨む。何年も何年も殺したいと憎んできた相手と、やっと戦える。胸中は熱く滾っていた。


「なまえは私達と一緒に船番しましょ!! ね!?」
「えー、でもドレスローザの町も見たいんだけど…あ! じゃあさ、ちょーっと町を見たらすぐに船に帰ってくるよ! 箒があるし!」
「すぐだぞ! すぐ!!」
「わかってるよ! ……なら、私がいない間に何かあったら困るから、これ渡しておくね」


ごそごそと鞄を探り、ある道具をチョッパーに渡す。見たことのないそれに、チョッパーはこてりと首を傾げた。


「なんだ? これ」
「糞爆弾に、巨大ネズミ花火、それから『盾の呪文』グッズ。この帽子とマントと手袋に『盾の呪文』がかけられてるから、これさえ身に着けてればどんな呪文も跳ね返す優れもの。友達と作ったんだ。悪魔の実に効くのはロビンで実証済みだから安心して!」
「おおおお!!!」
「四人分も流石にないから、ナミと…モモの助ね。チョッパーとブルックは頑張って戦ってね」
「そんなァ!!!」
「あんまりですよなまえさん!」
「レディファースト、だよ。それにモモも子供なんだから当たり前」
「なまえ!! ありがとう!!!」


ナミは感激のあまりなまえに抱きついた。その豊満な胸になまえは息苦しさを覚えるが、自分達の考えた悪戯グッズがこうして役立つのは本当に嬉しいものだ。


「あとは、噛みつきフリスビーに殴り続けのブーメランも。これ結構危険なやつだから、取り扱いには充分注意してね」
「わかったわ」
「あれ、もうルフィ達行っちゃったの…。んじゃ、私も行ってくるねー!」


ぶんぶんと手を振ったなまえは片手に箒を持ってドレスローザに降り立った。
さあ、愛と情熱の国 ドレスローザで、なまえは一体どのような戦いを見せるのか。

町をも巻き込む激戦まで、後――…