ついに激白したなまえ。しかしそれを「はいそうですか」と認められる程この一味は容易い人物達ではないし、むしろ疑り深い。
まずは事情聴取をしなければ、とウソップが言い出した事で、一先ずダイニングルームへと一行は入って行った。なぜダイニングルームかって? そんなのは簡単だ。


「サンジー! 腹減った! メ〜〜シ〜〜!!」


みんなお腹が減ったからだ。
大皿に盛り付けられたお肉に、魚介たっぷりのスープ。サンジの料理の腕を余すことなく振舞われた料理は、みるみるうちに無くなっていく。


「早く食べねえと無くなっちまうぞ」
「あ、えっと……」
「おれァゾロだ」


ゾロは適当に肉を皿に盛り、なまえに手渡す。それでもゾロは食べる手を止めずに次から次へと頬張る。
礼を言って受け取ったなまえは、ナイフとフォークを使って肉を一口サイズにカットし、口の中へ。


「〜〜〜っ!」
「どうだい? お嬢さん」
「お、お、美味しいです! すっごく! うわぁ、ホグワーツでもこんな美味しいの食べた事ないよ!」


一口食べればもう止まらない。次々と食べ進めるなまえに、サンジも目をハートにして喜んだ。普段はこんなに食べないのだが、今日はぺろっと食べきった。食後のデザートも用意されており、なまえはキラキラした目で口に運ぶ。


「ん〜〜っ、デザートも最高! クリームはもうちょい甘い方が私好みだけど、フルーツの甘さが際立ってちょうどいい!」
「サンジの飯はウメェだろ?」
「すっごく!!」
「シシッ、な! 悪い奴じゃねェだろ!」


緩みきった顔でデザートを食べるなまえ。そんな姿を見てしまえば、此方がいつまでも疑っているのが馬鹿らしくなってくる。すでにサンジはメロメロになっているため、なまえを疑ってなどいないのだが。


「おれも賛成だな。魔女だなんて会った事ねェからな、手合わせしてェ」
「おれも賛成だぞ! そんな怖い奴には見えねェ!」
「私も。ぜひいろいろお話してみたいわ」
「おれももちろんOKだ。 こんな素敵なお嬢さんが毎日おれの料理を……!!」
「おれもスーパーオーケーだぜ!!」
「ヨホホホホッ! 私も異論はありませんよ!!」


ゾロ、チョッパー、ロビン、サンジ、フランキー、ブルックと、賛成の声が大多数に。残るはナミとウソップだが、ナミは仲間達の様子に諦めたようだ。


「仲間にするったって、その子の事何も知らないじゃない。しかも異世界よ、異世界!! 普通じゃないわ!!」
「いーじゃねェかよ!! 細けェ事は!!」
「良くないわ!!  えっと、ちょっといい?」


ナミはまだデザートを食べているなまえに声をかける。あーん、とまた食べようとしていたスプーンを置いて、なまえはナミに向き直る。


「はい」
「まずは…そうね、魔女ってほんと?」
「はい。…ついでに言うなら、貴方達よりもずっとずっと年上です」
「年上!? え、うそ、何歳!?」
「あー…っと、歳は…すみません、忘れちゃいました。でも数百年は生きてますね」


思いもよらなかったカミングアウトにナミ含め一味は固まっている。見た目年齢は未成年なのに、まさかの数百年も生きているときた。


「魔女っていうのは長生きするのかしら」
「いえ…そうですね。マグルの人達よりも長生きなのは確かです。ですが数百年も生きるのは稀でしょうか」
「じゃあ貴方はその稀の内の一人なの?」
「いいえ。私はまた少し別です」


ここでなまえは一つ間を置き、自分の秘密を言ってしまっていいのかと考える。だが、ここは異世界。元の世界とはきっと何も関係ないだろうと、全てを話す事に。


「私は、所謂“不死”です」


想像すらしていなかった言葉に、ダイニングルームの時が一瞬止まったように思えた。


『『『えええェェェ!!?』』』


こういう反応はどこへ行っても一緒だ。なまえは苦笑いすると、テーブルの上にいるサリンに苺をあげてまた話し出す。


「不死ってだけで、不老ではないんです。でもどうしてこのような姿になったかと言うと…まあ、少し複雑な事情がありまして…」


言葉を濁すなまえにこれ以上は何も聞けない。ナミはそこで話題を変えてまた質問する。


「じゃあ、帰る場所はあるの?」


その質問は予想していなかった。なまえはきょとんとした顔をみせると、頭を掻いて首を横に振った。


「ありませんね…。まあ、なんとかなりますから!」


努めて明るい声を出すなまえに、ナミは漸く笑顔を見せた。


「なら、ここにいなさい!!」
「なななナミ!? 何言ってんだ!!」
「あら、私が決めた事に文句あるの?」
「そりゃああるに決まって、」
「文句あるの?」
「……ありません…」
「ならよし」


どうやらウソップも無理やり賛成派にされ、これでとうとう一味は総勢一致となった。あとはなまえの心次第。


「あの、いや、でも……まだ向こうでやらなきゃならない事があって…」
「でも帰れねェんだろ?」
「いや、帰る方法が見つかっていないだけで、」
「じゃあ行く当てねェんだろ?」
「それはそうだけど、でも、」
うっせェ!! 行こう!!!


なまえの言葉をぴしゃりと遮り、両腕を高く上げて笑顔でそう言ったルフィ。慌ててなまえは周りを見渡すが、みんな笑顔で頷いていた。
――こんな強引な人、初めて…いや、久し振りに会ったかもしれない。誰かに似てるとは思ったけど、まさか……。


「(ゴドリックに似てるだなんて…)」


有無を言わさないそれはとても似ている。
なまえはくすりと笑って、立ち上がった。一人一人一味の顔を見つめ、最後に礼をする。


「…どうぞ、よろしくお願いします!」


麦わらの一味に、魔女が加わった。
はてさて、これからの冒険は一体どうなるのやら――しかし、とても楽しいものに違いない。


「よォし!! 次の島に行くぞ〜〜!!!」
『『『オォ〜〜〜!!!』』』


旅はまだ、始まったばかり。