消えそうだ。
最初に思ったことは、それだった。
雪がしんしんと降る中、そいつは身動ぎ一つせずにただそこにいて、無感動に積もる雪を眺めていた。
「………」
無意識、だった。
いつの間にか、そいつに手を差し伸べていたのは。
けど、そいつは何も言わない俺の手にそっと手を重ねて。
氷のように冷たいそいつの手と、炎のように熱い俺の手が、ぎゅっと繋がった。
・
・
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「尊!帰ってくんの遅いわアホ!!」
「あ?」
「ッ優衣が!」
草薙が焦ったようにその名を呼ぶ。俺は詳しい状況も聞かずに二階へ上がり、あいつの部屋に入る。
そこにはすでに十束がいて、その十束の側にあるベッドの上で優衣は荒い呼吸を繰り返していた。
「……炎の、」
「せや。…あれがどんだけつらいか、尊もよう分かっとるやろ」
「あぁ」
炎の制御は、難しいどころじゃない。下手をしたら全て持っていかれそうになる。
生半可な覚悟じゃ、俺の赤は制御出来やしねぇ。
「優衣っ、俺の声聞こえる!?」
「は、ッ……た、…ら、…」
「つらいよね、わかるよ。でも耐えて、受け入れて。…その赤は、キングの赤なんだから」
もう何度目か、優衣がこの状態になる度に十束はああやって声をかける。分かっているからだ、あの状態になれば周りの声が遠く感じ、やがて意識を保っていられなくなることを。
「…ハァ、…ッ、は……はぁ……」
やがて、呼吸も落ち着いていき、部屋の温度も上がらなくなった。周りに発散していた炎が優衣の中へと収まっていく。
「…は……はっ……」
ベッドでうずくまっていた優衣は、やがてくたりと力が抜けてそのまま倒れこむ。十束が慌てて駆け寄るのを見ながら、俺は優衣に近づいた。
そんな俺に気づいた十束はホッとしたように微笑み、そこから離れる。そこへ俺は座れ込み、汗で顔に張り付いている髪を退けてやる。
「……みこ、とさ……」
「…よく頑張ったな…」
「…これ、で……わたし、も…」
――やっと、尊さんのクランズマンになれた
そう言って眠ってしまった優衣に、俺は一瞬だけ目を見開くが、すぐにフッと笑い、
「…こっちはとっくに認めてんだよ」
未だ何者かは分からない。
以前こいつが言った通り、もしかすると本当は俺の敵かもしれない。
……でも、もう俺はこいつを、優衣を誰かに譲る気も手放す気も毛頭ない。
「お前は、俺のもんだ」
この気持ちに名を付けるなら
きっと――