町を歩いていても
お蕎麦を食べていても
月を眺めていても、



近頃は右側が
ぽっかり空いていて

とても寂しいんです。



そんな事をひっそりと
胸の奥に仕舞いながら、

貴方が居ない時間を
潰す為に読み始めた文庫本は

とうとう三冊目に
なってしまいました。



物語の中の女が
ただただ男を待つ様子は
退屈で

私はいつしか
眠ってしまったのでしょう。



貴方が帰って来たら
すぐに分かる様にと

開けておいた引き戸から

吹き込む風が少し
寒かったのだけれど

それでも夢の心地良さから
抜け出せないでいたんです。



そうしたらね

ふと懐かしい香りが
温かさを運んで来たから

目を開けてみると
肩に見覚えのある白い羽織。



ああ やはり
右側に
座っていてくださるのね。

お帰りなさい。


(091117)

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