何事も常にトップを目指してきた僕だから、女に惚れられるなんて事は掃いて捨てる程、寧ろ生物学上より良い遺伝子を遺そうという本能から、女が優秀な僕を選ぶのは当然の事であり、僕に相応しいレベルの女以外からの好意は捨て置いても問題は無いと認識してきた。そもそも僕が認めるような女はそこら辺に転がっている訳でもなく、自ら特定の女を愛したことは限りなくゼロに近いと言っても過言ではない。僕を愛し、不安がり、去っていく。そんな女たちの愛の残骸が積もり積もって、気付けば僕を頂点に、裾野を広げた巨大なピラミッドが出来上がっていた。惚れた弱み、その通りだ。階層において、愛される者は愛す者の上に立つ。


「伊東さんは、愛されることに馴れていないのね」


なのに君は何度も何度も僕に愛を注ぎ続けているのかい?黙って、生み出した愛を僕に投げ続けているのかい?いい加減、馬鹿の一つ覚えのように僕を愛すのは止してくれないか。君の愛は硬いから、ぶつかる度に足元を揺らすんだ。崩れたらどうしてくれる。


「伊東さん、怖がってはいけないわ」


そうなのか?僕は怖がっているのか?頂上は高すぎて、下を覗くことすら躊躇われる。ひょっとすれば足を滑らせて転がって行く気がして足が竦む。弱かったのは僕の方。愛を与える者は逞しい。例えばここから落ちる僕ですら、その両腕なら易々と受け止められそうだ。


「君は、強い女なんだな」


その愛で、君は僕を引きずり降ろしてくれるのか。


(100514)

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