愛しい
10月10日 晴れ

ひとこと言おう
私は不機嫌だ。

せっかくフィディオのためにここまで来たというのに……

「ごめんエドガー、今日これから用事があるんだ」

申し訳なさそうにフィディオは俺に言い、さっさとどこかへ言ってしまった

……ここまではよかった。
約束もなにもしていませんでしたから、断れることもあるでしょう

ただ、その約束というのが……女の子と楽しそうに話している図にならなければ、私も不機嫌になることはなかった

ストーカー開始から3時間
楽しそうに歩いてるフィディオと少女Aを観察している
最初は好奇心だった
私服なフィディオが珍しくてついやってしまった
後悔などはしていなかった

(……見なきゃよかった)

今はすごく後悔している
私といるときよりも、楽しそうに笑うフィディオに……

「……」

そんなにそのレディと話すのは楽しいですか?
私にみせたことのない笑顔で……

何故か悔しい。

本格的に落ち込んでいると少女の方がフィディオの腕を掴みなにかに指をさす
それはどうみてもホテル

(……ちょ、まだそれは早いでしょう!!?それにフィディオにそんな知識があるとは思えません)

私は耐え切れなくなりフィディオに近づいた

「フィディ……」

「ここまで来ればわかります!案内ありがとうございました」

「ううん。困った時はお互いさまだよ!」

フィディオは少女にむかって手を振る
私は脳内で必死に情報を集め、現在の状況を考える

(…まさかただの…道案内?)

若干勘違いが恥ずかしくなった頃フィディオが私に気づいた

「あ、エドガー!こんなとこで会うなんて偶然だね!……ってどうしてそんな隅っこで体育座り!?」

「フィディオ、私を斬ってくれ」

「いやいや、なんでさ」

「てっきりフィディオに彼女が出来たのだと思って不機嫌になった私を斬ってくれ。こんにゃくも簡単に切れるこの包丁、なんと今なら31000円だ」

「通販みたいに宣伝しなくていいよ!?…彼女?ああ、さっきの子は、買い物に向かった時に会ったんだ。道に迷ってたみたいだからここまで案内……ってなんで不機嫌?」

「えっ」

「え?」

……そういえば、なぜ?
私と一緒に過ごすのをスルーで彼女と会ってると思ったから?
いや、でも普段は誰が誰と会おうが関係はない

「エドガー…?」

「ちょっとまって下さい。再起動しますから」

「エドガーは機械か何かなの?!」

「あの、フィディオさん」

「え?」

先程の少女がフィディオに近付く

「これ、さっきのお礼です」

手作りと思われるクッキーだった

「わあ、ありがとう!」

「本当にありがとうございました」

少女が去り際にフィディオの頬にキスをしたのが見えた
その瞬間、私は自分の気持ちに気づいた

(なるほど、私は……嫉妬していたのですね)

「エドガー、クッキーもらっちゃっ……」

笑顔で何かをつげるフィディオの唇を奪う

「……」

「……え、エドガー?」

唇を押さえフィディオは私を見る

私はフィディオが先程キスされていた場所を全力で拭く

「な、なに?エドガー…?ねえ」

「なんでもあります。そろってます」

「また通販風!?」

「……ちょっとまって下さい。再起動がうまくいかなかったようだ」

「今日のエドガーちょっと変だよ?」

「私は正常だ…」

「いやいやいやいや」

心配そうに私を見るフィディオ
ああ、気持ちに気づいたせいだ

フィディオを抱き寄せる
そして耳元で囁く

「好きです」

いつ殴られてもいいように構える
しかしフィディオは顔を赤くそめ顔を俯かせてしまう

「……っ、あ…う…」

「フィディオ……?」

ぎゅっと服を掴む手に力がこめられた
そのいちいちかわいいのだけど、次の行動が読めなくて不安になる

「……俺も……」

「え?」

「俺もエドガーが好きっ」

「!!」

大声で叫んでからフィディオは私の腕の中からすりぬけ、去って行ってしまった

ああ
本当に愛おしい

私は少し先で待っているフィディオを追い掛けた



prev next

bkm
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -