はれものみたいなタブー



「そんなのおかしいですよ!」

始めから点数まで決まってるだなんて、そんなのサッカーじゃない!

…それは、禁句。
ここにいる雷門サッカー部は多くて二年、少なくて一年間は。辛くても悔しくても、どんなに屈辱的でも好きなサッカーを続けたい、その一心でフィフスセクターのいう通りにしてきた。それじゃ、近くで見てきたからこそわかる事実。耐えられなくてやめていく部員たちも、いやというほど見てきた。
フィフスセクターが怖い。一歩間違えてしまったら好きなものを取り上げられる。それ以上に怖いものがないのは、誰だって同じ。
その努力をこの一瞬で「そんなのサッカーじゃない」と否定された。

じゃあ雷門が今までしてきたことはなんだ?サッカーじゃないのなら、何なんだ。
わたしが見てきたものは、サッカーじゃなかったのか。
わたしも、そして拓人も堪忍袋の緒が切れるのは時間の問題で。その怒りを先に口に出したのは拓人だった。

「お前に何がわかる!」

雷門が環境のなかで築きあげてしまった、諦めるサッカー。それをするこの場に、拓人の怒声はひどく不似合いだ。神聖だなんだと言ったとしても、いまではなんの意味も持たない。

「お前に何がわかるんだ。俺たちがどんな気持ちでサッカーをやってるのか!三国さんが、どんな気持ちでシュートをいれられているのか!

お前にわかるのか!」

はっ、となる天馬くん。ようやく自分の失言に気がついたようだ。
でも、怒った拓人はもうその反応にすら気づけない。遅すぎたんだ。さっきの天馬くんの発言に怒っていたのは事実だったけど、なんだか珍しく怒声をあげる拓人を見たら、自分は何も言うまいと思えてきた。結果がどうあれ拓人のいいたいことぜんぶを今ここで言わせてやるのが、わたしの役目のような気がして。

「俺たちだってやりたいさ、できる事なら好きなサッカーを思いっきり!でも、フィフスセクターに逆らえば、サッカー自体ができなくなってしまう!」

だからこそ俺たちは…
絞り出すような苦しい声で、そう言った拓人はうつむいたままどこかへと歩き出す。
蘭くんが「神童…!」と追いかけようとしたのを静止して、首を振る。

「今は、…そっとしておいてあげて」
「◎◎◎さん…」
「…ごめんね、天馬くんも、みんなも」

拓人、自制するのがちょっと遅かったみたいね。
何秒か前の口論で、今までの事をぜんぶ思い返しているのか皆沈んだ表情だ。二年間も続けてきたんだ、あと少しの辛抱なんだ、どうせ負け試合だろ、どうしたってもう逆らえないよ そんな声が其処此処から聞こえてきそうなくらいに。
もうすぐに始まる後半戦は、負け試合だとはいえ他者からみても当事者にしても、期待できるような物ではないだろう。
不安も疑問も諦めも、全てを後半戦へ持ち込んで。試合は再び始まった。











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