ほうほう成る程君がかい



立派なカーペットの先に続く、階段の先にある椅子に鎮座する聖帝と、今朝方雷門で試合をした剣城とそのチーム黒の騎士団の監督・黒木。お互いの姿が確認できないほど暗いその部屋で、二人の視線はひとつの映像に向いていた。


「…まさしく化身だな」


神童拓人の背後から現れた指揮者の様な気。化身。それを確認した聖帝は吐き捨てる様に呟く。


「能力者本人には自覚がないようです」
「…目覚めたばかりということか」
「今後、雷門中を如何に導きましょう」


導く、と言い方はさながらモーセのように聞こえるが、ここフィフスセクターではただの管理にすぎない。
神童拓人を映し出していた映像が、試合から雷門サッカー部の選手プロフィールへ変わる。その中から神童拓人のプロフィールを開き、聖帝は厳かに言う。


「この能力者はまだ未知数だ。これは利用できる」


プロフィールの家族構成にある姉の文字に眉を顰める聖帝だが、すぐにいつもの表情に戻り映像を再生した。

_____


欠課扱いにされた三時間は、仕方がないから諦める。義務教育じゃない高校生の、しかも週一の音楽を欠課にしてしまったのはまずい気がしたけど、これから休まないようにすればなんとかなるだろう。あとの二時間分のノートは午前中に写したからいいとして、残すところはホームルーム終了後のダッシュ。
チャイムがなると同時に多少乱暴に扉を開けて廊下を走り抜ける。階段を駆け下りるとそこには不幸にも生活指導担当の教師がいた。そして目が合う。このままだと昨日の欠課の理由を言わされるのは確定事項、プラスいま廊下を走ったことによるお小言をもらう羽目になるだろう。さてどうする?


これは一択。無視だ。
階段を下った勢いをそのままに、地面を蹴って走る。「おい神童!」名前を呼ばれたが止まるわけがなかろうに。いや本当土足のままの高校でよかったわ、ありがとうございます。あと元チア部の体力なめんなよ、なんか追いかけてきてるけど。


雷門に到着する前に(というか学校を出てちょっとしたら)教師は見えなくなったので、早歩きにしてグラウンドへ向かう。学校のブレザーは目立つから途中で脱いで片手に持っている。今度だれかから雷門の制服借りてこようかな、ここの制服色が可愛いんだよね。
グラウンドへと向かう途中、階段に座ろうとしていた男の子を見て思わず固まってしまった。それに気づいた彼もこっちを見て、お互い無言。え、何この子。一昔前の不良か何かかしら。


「…あんたが神童の姉か?」
「……あ、うん、ええまあ」


まさか話しかけられるとは思ってなかったから、変にどもってから何とかまともな答えを返した。というか、どうして拓人のことを知ってるんだろう。この子もサッカー部員なのだろうか。覚えてる限り、こんな子は雷門のサッカー部にはいなかったはず。とんでもないイメージチェンジをしたとしても、この顔は絶対見たことがない。だとしたら、単にサッカーが好きでこの入部試験を見にきたのだろうか。


「弟くんのテスト、始まったけどいいのかよ」


そんなことを考えているうちにテストは始まったようで、奇抜な彼はグラウンドに目線を向けた。続いてわたしもそっちを見る。うーん、ちょっと見にくいかも。











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