メシアの飴と鞭ですね。



今神童呼んでるから、とわたしの目の前に座るメシア。

「あ、あの、たすけてくれてありがとう」
「…助ける?」

俺は助けた記憶なんてないですけど、と顔を背ける。そして、だいたい、とさらに続けた。

「だいたい、ああいう男にはっきり言ってやらない神童のお姉さんにも原因はあるんじゃないですか」

…的を得ている。たしかにその通りだ、わたしはもっとはっきり言ってやるべきだったのかもしれない。後悔しても、男子が行ってしまったとなっては今更だ。

「そうだね」

はは、と自分でもわかるくらい渇いた声で笑った。彼も一緒になって笑ってくれたらよかったのに、「お姉さんは、泣かないんですね」なんて彼が言うから、堪えていたものが全部溢れてきて泣いてしまった。

弟が駆けつける頃には涙は全部ハンカチに吸い込まれていた。もちろんわたしのハンカチじゃなくて彼がかしてくれた物。後で洗って返さなきゃなあと他人事のように考えながら、「先輩なに女の子泣かせてんですか」とか「血は争えないですね」とか、雷門のサッカー部の会話を聞いていた。











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