年下でもいいですよもう



男子の肩越しから救世主の姿を垣間見る。そこには弟が先輩と呼んでいたフォワードだった。確か、うちの学校のゴールを割ったのはほとんどこの子だった。

「何やってんですかって聞いてんだ」

怒気を含んだ声で男子を一瞥する。わたしたちよりもひとつ年下の彼は、言葉だけで目の前の男子を怒らせたようで、「見てわかんねーのか、ガキ」と先ほどまでかけらも見せなかったきたない言葉遣いで反論する。
わたしは助けて助けて、と目線だけで訴えかける。彼は理解したように鼻で笑った。

「それで告白してますとか返されたら、笑っちゃいますよ」

ニコリとも笑わない表情でそう返されて、目の前の男子はいとも簡単に挑発に乗ってわたしを離した。急いで彼の方へ走り背中に隠れた。驚いた顔をされるも今はそんなことにかまってられない。

チッ、と男子は舌打ちをしてわたしを見据えた。そして
「邪魔が入ったけど返事待ってるから、神童さん」
と微笑んで見せたのだ。でも、それすら今は憎らしい。こいつは、わたしの。引き止めて一発殴ってやろうかと思ったけど、いまのわたしにそんな力は残ってなかった。男子の姿が見えなくなると同時に、背中を貸してくれた彼が口を開く。

「……神童?」

わたしを指差してそう訪ねる。わたしは頷いて背中から離れようと手を離したけど、腰が抜けてへたり込んでしまった。何か、悔しい。

「うちの部の神童拓人と知り合い?」
「わたしの、弟、です」
「…マジか」











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