第一印象なんて飾りです



「松風天馬、西園信助。以上、二名だ」


淡々と出された二つの名前。今年の雷門サッカー部の新入生が決まった。名前を呼ばれなかった三人は各々悪態を吐いてグラウンドから出て行った。内申のためだけに入る奴や、軽視したりすると容赦なく落ちる雷門サッカー部の狭き門。今年その門を通った二人は互いに頬を抓りあって、夢じゃない!と噛み締めている。


「おめでとう」
「あ、えっと、ありがとうございます…!」
「やだそんなに怖がらないで、よろしくね二人とも!」


第一印象があれだったんだから怖がったって仕方ないですよー、速水くんがボソッといった言葉に笑顔で振り向く。ひい、だなんて失礼な。


「改めてわたし、神童◎◎◎。神童拓人の姉です。」
「キャプテンの…!?俺、松風天馬です!よろしくお願いします!」
「俺は西園信助っていいます!」


彼らの目は喜びと期待と楽しさが入り混じっていて、いま改めて見返すとすごく綺麗だった。純粋にサッカーが好きなんだろうな、って分かる。
苦手だと思っていたけどこういう子が雷門に入ってくれるなら、べつに今年の新入部員は二人だけでもいいかもしれない。


「あれ、拓人は?」
「いま、監督の方に」
「…そか、」


監督に文句でもいいに行ったんだろう。苦笑いを漏らすわたしの後ろから、正確にいうとベンチからわたしを呼ぶ声がする。


「お姉さーん、手当するからこっちこっちー」
「お姉さま、早く早く!」


すっかり忘れてたけど、拓人のボールを素手で受け止めたんだった。もう痛くはないけど、風に当てると少しヒリヒリする。湿布かなにか貼ってくれるのだろう。でも茜ちゃん、包帯持ってるのはどうしてかな。そんなに重傷じゃないぞ。ベンチに着くとスケバン風の子がわたしの掌を叩いた。


「ちょ…!瀬戸先輩!」
「なんだ、本当にそんな痛くないのか」
「何してるの!」


ほぼ無反応だったわたしの手を持ってケラケラ笑う彼女…瀬戸ちゃん。下の名前がわからないから名前を聞いたら


「瀬戸水鳥。神童の姉貴って頑丈スね」


と、ちょっと乱暴に湿布を貼りながら答えてくれた。さらに上から包帯を巻き始める左手の茜ちゃんと右手の…一年の子。この子にも名前を聞いたところ空野葵ちゃんだそうだ。二人ともそんな大層な事しなくてもいいのに。
黙ったままこっちを見ていた蘭くんに助けてオーラを向けたところ、あまりにも自然な動作で天馬くんに向き直りやがりました。ちくしょう、美少女(?)め。










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