夕立!?!逃げろ!
「疲れた」
「お疲れさまなのー」
「悪かったな、ルカ」
両親に頼まれた御中元を配り終えた二人は、みんなの待つ海辺の別荘へと歩いていた。
「こんなことなら車で来るべきだったな」
「大丈夫だよ、それともなーにお兄ちゃん、ルカと一緒に歩くのは嫌なの?」
「んなわけあるか」
ピンっと軽く額を弾かれルシェリカは目を瞑る。
「ヒールだし、疲れるだろ」
「知らないのお兄ちゃん、少し踵がある方が歩き安いんだよ」
「そういう問題じゃない」
他愛もない会話に花が咲いて、別荘まで後少しまできた頃、雲行きが怪しくなってきた。
微かに、湿気を含んだ空気にアッシュは一雨来るなと直感的に思う。
「ルカ、少し歩調早く―」
言ってるそばから、ぽつっと鼻先に当たる水。
「ちっ」
「え、雨…きゃっ!」
庇うように、兄の着ていた服の下にルカは招かれた。
「ずぶ濡れになるよりはマシだ、我慢しろ」
「これじゃ、お兄ちゃんが」
「俺は平気だからな」
走るぞと促され、必死にアッシュに着いて行こうとするがやはり、ヒールでは辛い。
「後でアシュにフォローするんだぞ」
「きゃっ!」
上着を脱いで、ルカに頭から被せると横抱きにアッシュは持ち上げ、走り出した。
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「ルーク、タオル!!」
「わ、二人とも大丈夫?」
「ルカから風呂に入れてやってくれ」
「うん、今沸かしてくる」
タオルを受けとり、アッシュはルカに渡す。
「お兄ちゃん、すこし屈んで」
「ん?、こうか?」
ちょっとすねぎみの妹の声に大人しく屈むと、小さくても温かい手がタオルを掴んで頭を撫でる。
「ルカだってちゃんと走れたのに」
「すまなかった」
「でも、ありがとうなの…」
タオルから見えた妹の顔は可愛くはにかんでいて、ルークからの声に妹は返事をすると、アッシュの額にすばやくキスをしてパタパタと駆けていった。
思わず、ポカンと呆けたアッシュはすっかり晴れ赤く染まった空と同じくらい顔を赤くして頭をかいた。
END
お題はwater*glassお借りしました!
夏休みの宿題です!
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