映画デート





「ルーク、映画に行くぞ」
「えっ」
「ガイがチケットをくれたんだが…お前が見たがってるやつだと言っていた」

キッチンのカウンターから長男は突然、告げた。

「っといつ?」
「今からだ」
「間に合う?」
「ああ、大丈夫だ」

迷っているルークを後押しするように、ルクが「別に言ってくれば」と言ってルークの手から食器拭きを取り上げる。

「うん、ルー兄、行ってくるといいよ…後はルク兄とルク子でやるから、ね?」
「じゃあ、行くぞ」
「うん、ありがとう、じゃあ準備してくる」

快く残りの姉妹、弟に送り出しされルークは気兼なくアッシュと家を出た。

「ルク、お前よく許したな」
「アシュ姉、俺のことなんだと思ってるんだよ」
「ルーク大好きな甘ったれ」
「確に間違っちゃいねぇけどそこまで縛ったりしねぇよ」
「偉い、偉い」
「だろ?」

まぁ、多少はもやもやするけどとルクは、最後の皿を手にとった。



「アシュ兄、あんまりこういうの見に来ないでしょ」
「…そうだな、見るなら専ら字幕だ、吹き替えはあまり見ないな」

二人がけの映画館のシート。
アッシュは、下心が見え見えだとガイを頭の中でコテンパンにするデモンストレーションを繰り返す。
映画の内容は、ラブストーリーより、カンフーアクションが強いことが唯一の救いか。

「…」
「お前、寒いんじゃないか?」

腕をずっと手で擦っている弟。
確かに空調が少し、キツイ気もするが…多分ルークの薄着にも原因があるだろう。

「ん、少しだよ」
「馬鹿、風邪を引く」

着ていた薄い上着を脱ぐとアッシュはそれでルークをくるみ、しっかりと抱き寄せた。

「アシュ兄」
「なんだ」
「こんなことされたら寝ちゃいそうだよ」
「それもまぁ、いいだろ、…もう少し、てっとり早く温めてやる」
「えっ、アシュん…」

確かに暗がりだし、殆んど人いないし、抱き寄せられてるから見えづらいかもしれないけど、こんなところで!!?
と、キスに動揺しまくりのルークはただ、ただその猛攻を受けるしかない。

「ンンっ!んーんー!ンンン」
「っは…ほら、簡単に熱くなっただろ?」
「こんなの、アシュにぃのばかぁ」

羞恥で映画どころではない。
逆にこの体の熱をどう沈めようかとルークは必死だ。

「暖まったならいいだろ」

本当に手段を選ばない長男だとルークは少しアッシュを睨んでから映画に目を戻した。



******




「まったく…」

寝てしまった弟。
抱えるアッシュは口調とは裏腹に、優しい表情をしている。
家まで寝せてやりたいが、必ずおこさないとルークがヘソを曲げるので体を軽く揺すった。

「んん、」
「ほら、ルーク…帰るぞ起きろ」
「うん…しゅ、に?」

くいくいと、袖を引く。

「ん?」
「今日は、ありがと」
「気分転換になったか?」
「う、ん…」
「ならいい、まだ家に着かないから、寝てろ」

半分、とろんと眠そうなルークは兄言われるとすっと瞼を閉じた。






END





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