ある日の大事件6 最終話



急に中心で回っていたものが無くなると、どうしたらいいかわからなくなるのは、誰だって頷ける。







パッとルークとアッシュが目が合うと、次男の方が堪えきれなくなって視線を反らし逃げていく。

「ルークもか…」

どうすればいいのかわからなくなってアッシュは肩を落とす。
ただ、逃げるのがうまくて、アシュリアの時のように無理に捕まえることができない。

「つ、」

伸ばした手を引っ込めてアッシュは前髪を掻いた。


「お困りですか、お兄様?」
「気持ち悪いぞ、ルク」

一刀両断されるが、ルファークは笑みを保ったままだ。

「今日、俺が迎えに行くまで起きて待ってろよ」
「どういうつもりだ?」
「寝不足なんだよ、一人で寝たいだけ」

珍しいことをいう三男に視線をやり、表情を伺うがただ笑うだけだ。

「わかった」
「じゃあ、待ってろよ」

こうして、アッシュは自室でルクを待つことにし、階段を上がる。








本当だったらこんなことなんてしたくないさ。
ただ、仕方ないんだよね、だから、こうしないとな。

「ひっく、あく」
「ルー兄、寝ないと辛いよ」
「ごめ、ん ルク」

大事件から毎日こんな感じのルーク。
アシュリアの時は自分から話したくせに、それとこれとは別らしい。

「俺、ちょっとトイレに行ってくるから」

っていうのは嘘だから、そのままアシュ兄の部屋に行く。

「ルクか」
「じゃぁ、しっかりやっとこいよ〜…それから、前髪おろせ デコだしてたらすぐばれる」

ぐしゃぐしゃとアッシュの髪をおろすと欠伸を一つ。
ルクはアッシュのベットにダイブするとそのまま寝てしまった。

「悪いな」
「…」

パタンと扉が閉まると、今回だけだっつーのとルクは心の中で呟いて、今度は本当に眠りについた。








「ふ、くっ」

ルファークが帰って来たのか、歩く音がする。
まだ、泣いてると言われそうなのでルークは枕に顔を埋めて隠した。
そっと隣に、ルクが入ってくるのがわかる。

「ルクちゃ、?」
「…」
「るく、んンっ!?」
「っ、ルクじゃねぇ、悪いな ルーク」

逃げられないようにしっかり捕まえてアッシュは、次男の名前を呼ぶ。

「ぃゃっ、あしゅにっ」
「いいから聞け」
「やっやだっ!! アシュ兄行かないでよ、まだ、家に居て」

ぽろぽろと涙を溢すルークの目元を少々乱暴に拭うとアッシュは軽くデコピンをする。

「だから、人の話を聞け」
「な、に?」
「明日、電話して断ることにした」
「へ、?」
「まったく、泣きつかれると思わなかった…こんなに、頼りないやつらに家を任せられるわけないだろう、…悪かった、ルーク」
「ふええぇっ!!アシュ兄っっ」

すっかり小さな子どもになってしまったルークを、苦笑いして優しく撫でた。








「そんなわけで、この件断ることにした」
「「よかったの!おにいちゃあぁん!!!」」

左右を妹が飛び付いて離れない。
普段ならそんな様子にブチギレる姉も、長男がいることに安心したのか小さく微笑んでいて。

「ルー兄、また泣いてるぜ」
「うるひゃい、るく、のばかぁ」








こうして、ファブレ家を揺るがした大きな事件は、終りをむかえるのでした。
そして暫く、ルク以外、魔法にかかったようにアッシュから離れることがありませんでした。




END




[ 75/87 ]

[*prev] [next#]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -