ある日の大事件5




「参ってるみてーじゃん」
「お前にまで突然泣かれたらどうしようかと思ったぜ」
「俺がそんなたまに見えるかよ、いなくなって清々する」

ソファに座っていた三男の近くに、疲れ果てた長男が腰をおろす。
それでも冗談を言えるんだからアッシュの体力は大したものだ。

「で、どうよ皆の反応見たら」
「正直、行きづらいな」
「だったら、止めれば」

あっさり言ってしまう弟は逸そ、清々しいくらいに憎い。

「出来たら苦労しない」
「そ、じゃあ、行けば」
「お前、可愛くねぇな」

軽い言動のルファークにアッシュは拳を握りしめる。

「別にアシュ兄がいなきゃ駄目だって程、俺たちは子供じゃないし」
「そうだな」
「結局アシュ兄がどうしたいか、だろ」
「ああ、だから俺は」
「勉強しに行きたいって?
それ、本心?」

洞察力、考察力では多分、家族一だろう。
ルファークは人の会話を黙って見て、聞いて、考える子だから、確信を突くのも、とてもうまい。

「…アシュ兄がどう考えてるかわかんないけど、今までずっとワガママしてないんだからたまにワガママ言ったって、父上だって母上だって文句は言えないんじゃねぇの?」

ソファにふんぞりかえる三男はいつになく得意そうだ。

「お前は俺に家に残ってほしいのか?」
「俺は、全然いなくてもいいんだけど…まぁ、重症がもう一人いるからさ」
「ぁ?」
「とにかく、ワガママ言ってもいいんじゃないのってこと、それだけ」
「あ、あぁ」

頷くとルクは炭酸を一口。

「まぁ、いないよりは、いた方がいいかな」

やっとこさ、呟いたルファークにアッシュは珍しく口元を緩ませて微笑した。


END






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