ある日の大事件4


原因は分かっている。
一つ目は、ルーファを散々泣かせたこと。
二つ目は、ルシェリカと一緒に寝てしまったこと。
これ以外思い当たる節がない。

「おい、アシュ」

話しかけるなと言わんばかりに睨まれアッシュは口をつぐむ。
なんでこう、ファブレ家の女たちは眼力が強いのか、長男は撃沈する。

「はぁ、アシュリア姉相当だね」
「ルーク、それどういう意味だ」
「何言ってるのアシュ兄が原因でしょう」

カタンとコーヒーのカップを差し出してルークは強めの口調で兄をなじる。

「ルーのルカのことか?」
「違う、ヒントはここまで後は自分で考えて」

そんなこと言われても話しかけると、もの凄い眼力で責められどうにもいかない。
それでも、行けとルークに言われ、覚悟を決めてアシュリアをつかまえに立ち上がった。

「おい、アシュ」

右手を掴むと振り向き様に左手が容赦なく顔めがけてとんでくる。

「ぶねぇな…」
「ちっ、避けたか」

本気なのか舌打ちまでしたアシュリアにアッシュは溜め息をつく。
なんでこう男には容赦がないのか。

「お前、なんで俺のことを避ける?」
「そんなの自分で考えてから来い、馬鹿長男」

自分を馬鹿よばわりできるのは兄弟の中でアシュリアだけだが…今のは大分効いた。

「悪かった、勝手に決めて」

今回の件は謝ってばかりだと内心で思う…反面、自分は重要な場所にいるんだと再認識する。

「別に、決めるのは兄上の勝手だからいいが…引っ越しの話は一度も出なかったはずだ」
「それは…」
「それは?」
「…理由は、ない」

ズルッと姉がこける。

「殴るぞ、ヘタレ!」
「そう言われても仕方がないが、何故お前がそこまで怒る?」

大事な妹にちょっかいを出すやつが減って万々歳の筈なのに。

「そっ!そんなこと自分で考えやがれ!!」
「もしかして、お前もルーたちと同じ理由か?」

カチンとアシュリアが固まったのを、長男は見逃さず、図星だからか、アッシュ掴まれたまま動かないし、うんともすんとも音を出さない。

「…///」
「っ!だったらどうした、屑めっ!!!」

さっと赤くなったアッシュの脇腹にフリーだった足が綺麗に入って、長男は崩れ落ちる。
さっさと、長女は洗面所に向かったが、髪の間から見えた真っ赤な耳が苦しむアッシュに真実を伝えていた。



END




[ 73/87 ]

[*prev] [next#]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -