ある日の大事件1



それはほんの少し前のこと。
長男が大学に入学が決まった時のお話。








「え、引っ越し?」
「あぁ、大学に行きつつ父上の友人の下で勉強させて貰えることになってな」

妹たちは食べていたホットケーキをボロリとおとす。
ルクは見ていたテレビから視線をアッシュにやり、長女は思い詰めたように溜め息をついた。

「え、と…」
「突然の話で、済まないな」
「お兄ちゃん、ここの家からいなくなるの?」

ルーが大きな瞳をうるうるさせ、身を乗り出して聞いてきた。

「ああ、大学の近くにいい物件も見つけてあるんだ」

もう決めてしまっている長男に妹弟たちは一斉に肩を落として、溜め息をついたのだった。

「驚かないってことはアシュ姉は知ってたのか?」
「話は聞いていたが、もう決めていたのは初耳だ」

軽く責めるような視線をアシュリアは長男に向けた。
アッシュが困ったように眉を寄せたのも気づいたのはアシュリアくらいろう。

「いつから行くの?」
「大学生活が始まる少し前に行く予定だ」

妹たちが揃ってカレンダーを見に行き、綺麗な淡いピンク色をした指をおって「いち、にぃー、さん…」と数え始める。
数秒後に「みぎゃーっっ」っと叫んで、ルーがタックルするが如く、兄の腰に抱きついたのだ。

「お、おいっ!ルー」
「いやぁなのぉ〜っ!!!」

ルカもルーと同じように飛び付きたいくらいの気持ちだったが、もじもじと指をこねるだけ。
ルクが姉に視線をやれば、アシュリアは不機嫌そうにしつつも事が事なので黙って見ていた(握られた拳は迫力がある)。

「じゃぁ、アシュ兄準備しないとね…」







それは三月の終わりぐらいのこと、アッシュの引っ越しはファブレ家にかつてないほどの地震を起こしたのだった。



END




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