ブザービート





「「「ルファークくーんっっ!!」」」

軽く手を振って声援に答えてやると「きゃーっ!!」という黄色な声が上がる。

「すっげぇな、ルク」
「そうか?」
「何だよ、前ならもっと喜んでたじゃねぇか」
「今だって嬉しいよ、女の子に囲まれるのは大好きだしな」

ただ、今日は別の約束があるから。
女の子の声援よりも、もっと大切な。

「…勝っておきたいな」
「自信つけてぇ」

強豪チームとの練習試合に少なからず、ルクも緊張していた。

(ふぅ…)

スランプから抜け出せないルクは特にこの試合に賭けている。
だから、家族の誰かの応援がほしかったのだ。

(一応ルー兄だけは来てくれるって言ってたけど…)

会場にはまだ誰もいない。

(頑張るか)

ぎゅっと拳を握りパンっと頬を叩くと気合いをいれた。






「始まってる!早く!!」
「あ、待ってってばルー兄!」

駆け出したルークにみんなついていけずにいた。
元サッカー部は伊達じゃない。
その体力は衰えるどころか、品物が安ければどこまでも自転車で走ったり、重い荷物を持って歩いたりすることで逆に鍛えられ伸びていた。

(キツィ…)

寝起きの長女には朝のこのダッシュは辛い。

「お姉ちゃん、具合悪そうなの…」
「平気だ」

寝坊した手前言えるわけがない。
やんわりと笑って見せる姉は無理をしているようにしか見えなかった。

「…ルー」
「何お兄ちゃん」
「死ぬ気で走れ、行くぞ」

それだけ言うと、あろうことに俵抱きでアシュリアを抱き上げると長男は走りだした。
しかも、めちゃくちゃ早い。

「兄上っ降ろ「却下だ、遅い」
「ふぇっ、お兄ちゃん早いっ!」

車という手段は思いつかなかったのか。
今、それに気付く人は誰一人いなかった。









「あー!もう結構過ぎてる!!」
「うひゃぁ、接戦なの」

試合は殆ど僅差のまま進んでい先に着いたルークもルカも手摺をぎゅっと握る。

「なかなかいい試合してるな」
「ホントだぁ!」
「兄上っいい加減降ろせ!!」

背中にアシュリアの肘が綺麗に入ると「ぐっ」とアッシュはうめいて長女を放した。

「ルク、キレがない」
「いつもだったらもっと自信満々にプレイしてるのにね」

ベンチ側に移動すると丁度タイムアウトとったようだ。
きょろきょろしている弟にルークは手をふると、どうやら気づいたようで嬉しそうに微笑む。

「試合終わりそうなんだけどー!」
「ごめん!僅差じゃんがんばってね!」
「おー!まかせろよ!」
「勝ったら何でも好きなもの作ってあげる!」

ルークがコートに戻るルクに叫ぶと後ろ手にピースをして試合を再開した。

「ルク兄ちゃ、頑張るのー!!」
「にゃー!!!あっちの人足、早い!!」

キィーキィー言いながら、身を乗り出してルーもルカも叫んだ。
試合もさることながら、勢揃いのファブレ家に味方のベンチも目を離すことができない。

「後、一分だ」

アッシュが呟くと、相手のシュートが入り、二点が追加される。

「スリーポイント狙わないときつくないか?」
「大丈夫だよ、アシュ姉 ルク 今までと全然違うもん…スリーは得意だし決めるよ」

興奮気味にルークが言うとアシュリアも口元を弛める。

「先に試合を投げた方が負け、だからか?」
「うん!」
「ほら、ルクにボールがいったぞ」

アッシュに言われて、次男と長女は慌てて試合に目線を戻した。








体が軽くてエンジンが、かかってるみたいで。
周りの雑音も聞こえないし、不思議な感じだ。

(いける)

ラスト三十秒。

(必ず、入る…)

腕には余計な力は入ってない。
軽く構えると、ボールを綺麗なフォームでルクは投げた。

「入れー!!!!」

ルーの声でルクは試合に引き戻された。
その時にはもう、審判のカウントの指は下を向いていて。
続いて、ピッピーと試合終了のホイッスルが鳴った。

「勝ったのー!!」
「やったぁ!!」

抱き合って喜ぶ次女三女。
ルークも嬉しそうに微笑んで声援に礼を言いに来たチームに拍手を贈った。








「ルクちゃん」
「あれ、みんなは?」
「先に帰ってお寿司とるって準備しに帰った」

横に並んで手を繋ぐとルークとルクは家路を辿る。

「あのさ、ルー兄ありがとな みんな呼んで来てくれて」
「ルクちゃん」
「ん」
「諦めずによく頑張りました」

人通りがないことを確かめるとルークは頬に口づけた。

「ルー兄、そういうことされるとたまんないんだけど…」
「仕方ないな、今日はごはんも作らなくていいからいいよ、ご褒美」

いつにない甘やかしぶりを発揮するルークにルクは握る手に思わず力が篭ってしまう。

「スランプ…だったんでしょ?」
「そこまで知ってたんだ」
「だから今日は特別」

その気持、よくわかるからとルークまた笑って弟の頭をくしゃくしゃと撫でた。


END







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