お兄さまと一緒 〜ルーク編〜






三者面談。
…どうしたらいいんだろう。
生憎、ファブレ家の両親は忙しく世界中を飛び回り家に帰ってくることはあまりない。

(…仕方ない、先生に事情話して…)
「ルーク」

呼んだの長男のアシュ兄。

「何、アシュ兄」
「持ってるプリントだしやがれ」
「べ、別に何も…」
「早くしろ」
「う…」

この家の主人ともいえる、アシュ兄に逆らえるとしたら、アシュ姉とルーくらいだ。
渋々プリントを出すと苛ついたように頭をかく。

「ルーク、こういうプリントは早めにだせ」
「ご、ごめんなさい」
「俺が行くから」
「え、アシュ兄大学は…」
「明日は午後から講義がないからな」

兄だって忙しいのにと心苦しくなる…が。

「そんな顔するな、父上と母上がいないんだ長男の俺が行くべきだし…それにおまえの大事な将来のことだ」
「アシュ兄…」
「ついでだ、おまえら全員いつだ?日にちと時間帯教えろよ」

スケジュール帳をだして細かい字で書き込んで行くアシュ兄。

「ルー兄」
「ルー?」
「よかったねっ」

ペロっと頬を舐められて何事かと思えば自分が泣いていたのにいまさら気付いた。











「またせたか、ルーク」

そう言って、学校にきたアシュ兄はいつもとは違う、スーツに長い髪を結い前の方にもってきている。

「大丈夫、まだ前の人終わってないから」
「そうか」

ふわりと微笑む兄。
思わず、胸がとくんっと鳴って。
これが家と外のギャップ。

(アシュ兄…)

逆にそのギャップが不安要素だったり。

「あと何かお話することはありますか?」
「いえ、こちらは何も」

ちょっと緊張しながら、三者面談が終わるとアシュ兄を引っ張り気味に学校からでた。


「アシュ兄」
「何だ?」
「もう、笑わなくていいよ」

車に乗り込むとルークがアッシュの頬を撫でた。

「気付いてたか…」
「もう、俺の前だからそんな顔しなくていいだろ?」
「悪いな、ルー」

肩口に顔を埋める、兄。

「平気?」
「あぁ、ルー このままドライブしにいく、付き合え」
「え、うん いいよ」

軽く返事をすると今度は本当に嬉しそうに兄は笑ってエンジンをかけた。









ネクタイを緩めて、楽しそうに車を走らせる兄。

「アシュ兄、どこ行くの?」
「海…行ったことないだろう?」
「ばっ馬鹿にするなよ、海くらい」
「違う、ファブレ家のプライベートビーチだ」
「…はぁ?」

そんなものがあるとは初耳だ。

(うちって金持ちだったんだ…)

自覚のない、ルーク。

「アシュ兄、カーナビ使わないの?」
「阿呆、自分の家の所有地にカーナビ使う馬鹿がどこにいるんだ」
「…ふっ、うん そうだね」

まだ、使えないんだと心の中で笑いつつ、アシュ兄が何度もそこに足を運んでいることがわかった。








「おわー…」
「…口閉じろ、みっともないぞ」
「んなこと言ったってアシュ兄…」

半端なく広い。
いや、海だから広いんだけど。

「今度は、あいつらも連れてくるか」
「そうだね、ルー辺りにばれたら騒ぐよ きっと」

潮風に髪をかきあげながらアシュ兄は背伸びをした。

「アシュ兄?」
「うん?」
「頻繁にここに来てるの?」
「…まぁな、外だとここが一番落ち着くからな…」
「そっか…」

これでも、六人兄弟の長男だから人に言えない苦労も多い。

(無理しなくていいのに…)

砂を掴むと指の間からサラサラと零れた。
しばし、沈黙…真っ赤な太陽が海に沈みかけている。

「ルー、言っておくが俺はおまえ達の事で無理はしてないからな」
「え…」
「顔に書いてあるぞ」

指摘されて思わず顔を押さえる。

「おまえのそういうところは美徳だな、大事にしろ」
「なんだよ、それ…アシュ兄なんか人の心配ばっかりで自分の心配してないだろ…俺だってアシュ兄の事心配なんだからな」
「…わかってる」

頭をぽんぽん撫でられて今日何度目かの、兄の笑顔。

「そろそろ、帰るか…飯の用意もあるだろ?」
「丼にしちゃうから帰りにスーパー寄って」
「了解…そういえば来週ルクの部活もなかったな皆でくるか」
「うん!」









来週と、運転する兄の横顔に思いを馳せつつルークは夕日を眺めていた。










END






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