行き場のない嫉妬は誰のせい?




「…」

だてにクラスが同じだと嫌になる。

「ルークー」
「つめた!くっつかないでよー」
「だって俺の手冷てぇ」
「ストーブで温めればいいじゃんか」

くそー。
ルー兄に触るなとか、ルー兄もそんなやつに触るんじゃねぇとか独占欲が、膨らんできて。

(…我慢できねぇ)

早く俺の隣に来ないと、教室で深いキス…かましたくなる。

「ルク?」
「っせぇよ…」
「ごめんね、帰ろうか」

人の気も知らないで、下駄箱のところまできて思わずキスしたら、ルー兄におもいっきり馬鹿と怒鳴られた。

(馬鹿はどっちだ…)

いつだってこうやってルー兄のこと愛してたいのに。







恥ずかしくて死にそうだった。
不機嫌そうな弟の声と、今にも理性を溶かし崩していく舌。
甘受したら止まらなくなる。
だから、思わず馬鹿って怒鳴って家まで走ってきちゃって。

(俺の馬鹿…)

小さく溜め息をつくと、ルークは買い物をしに早々に出かけた。


(怒鳴る気なんて無かったのに…)

ルークはさらに溜め息を増やしていく。
けれど、あんな目をしてキスされてはどうやって反応したらいいかわからない。
あんな、感情がむきだしの目…、自分には応えられないような気がして。

「ルクちゃん…」

ぽつり、と名前を呼ぶとがくんっ!と自転車が変な音をたてる。
がすん、がすん、と走る音はまさにパンクの証拠で。

「嘘…」

携帯も無い。
しかも、自分が今現在たっている場所は、住んでいる町の隣町。

「最悪…」

乗ることを諦めてルークは自転車を押して、歩き始めた。








「え、ルー兄帰ってないの?」
「う、うん…お財布だけもっていなくなっちゃって」

ルクが部活から帰ってくれば、ルカからの衝撃の一言。
謝ろうと帰ってきたのに、一気にどうしたらいいかわからなくなった。

「お姉ちゃんとアシュ兄が探しに出てるんだけど…」
「俺も行くわ、何かあったら携帯に連絡くれ」

何かあったら?
何かあっていいわけあるか。
ルークは今朝、隣町のスーパーのチラシに印をつけていたのを思い出して、いつも自転車で走っていくその道をルクは駆け出した。








「疲れた…」

すっかり暗くなった辺りを見てルークは目の上を擦った。
少し、目が疲れて視野が狭くなっていることに気づく。

「いつもなら、ルクが…」

膝枕してくれたり、マッサージしてくれたり、とても優しく労ってくれるのに。

「俺の、馬鹿…」
「誰が、馬鹿なの?」

暗がりからの声にルークは目を丸くして、そちらを見る。

「探した、ルー兄」
「るく…」
「ごめんね、ルー兄は馬鹿じゃないよ」

こつんと、額を合わせルクはルークを見つめる。
走ってきた呼吸はあんまり落ち着かなくて、少し憎かった。
少しでも、余裕があるとこ見せたかったのに。

「俺が変な嫉妬したから、ごめんルー兄」
「俺も、怒鳴ってごめんね…」
「な、泣くなよ…」
「だってぇ…」

心細さから一気に解き放たれてルークは涙腺を緩めるしかない。
優しくルークを引き寄せる腕はすごく暖かくて。

「帰ろ、ルー兄」
「うん」
「疲れた?アシュ兄たちにも連絡したからすぐ来るよ」

すごく、すごく、優しいルクにルークはなんとも言えなくなる。
嫉妬したとか、独占したいとか…ルークだってそう思ったことは少なくない。

「ルク」
「ん、なんぅっ!?!」
「ん、んん…ぁふ、」

これで、おあいこと言うとルクは照れたように笑い、もう一回と道端とかおかまいなしに俺たちはキスをした。



END




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