1月1日



「ん、」
「おはよう、ルカ」
「ママ、パパ、アシュ兄ちゃんおはよう」
「あらあら眠そうね、顔を洗っていらっしゃい 新年のご挨拶をしたらルークたちに電話して、パパたちと行く準備よ」
「はーい」

電話したら真っ先にルーが出て、新年早々、怒られてしまった。
あとで、干支にちなんでネズミのヌイグルミでも買っていこうとルカは小さく笑う。

「準備は出来たか?」
「うん、終わったよ」
「、」
「お兄ちゃん?」

急にアッシュが黙ってしまったのでルカは首を傾げる。
それを見ていた、シュザンヌはくすくすと笑って耳元で「あんまり、綺麗で照れてるのよ」と教えてくれた。

「えっ」
「母上!からかわないでください」
「母は本当のことを言っただけですよ」

上品に口に手をあて笑うシュザンヌには流石のアッシュも勝てないらしい。

「おぉ、ルカ…シュザンヌの若い頃によく似ていて綺麗だぞ」
「本当、パパ?」
「ああ、本当だ」

そのままルカをだっこしようとする父をなんとか止めてシュザンヌを残し三人は、新年を祝うパーティーへと向かった。



「まぁ、アッシュにそちらは…」
「妹だ、ナタリア」
「お写真でしか拝見したことがありませんでしたので、会えるのを楽しみにしていたの」
「ルカです」

ふわふわの金髪を揺らした女性は、母の兄の子供だとは聞いている。
実際に会ったことがあるのはかなり幼い時だったのでルカはあまり覚えていない。

「最後に会ったのは三才の時だもの、覚えていなくて当然ですわ」
「え、と、ナタリアさん」
「まぁ!そんな堅苦しくなくてよろしいのよ!私のことはナタリアと、だから私も貴方を名前で呼ばせて」

すっかり仲良くなって、ルカはパーティー中もナタリアと一緒にいることにした。

「お父様、ファブレ家の皆様がお着きになりましたわ」

そういってナタリアが近寄るクリムゾンよりも年上の男性…。

「アシュ兄ちゃ、」
「ああ、国王だ」

あまりにもさらりと言ってのけた兄に、ルカは少し眩暈がした。
教えてもらえなかった、知らなかったでは済まされない。

(一応、王族に連なってたんだ)

姉辺りは知っているだろうが後は知らないだろうとルカは思う。

「久しぶりだな、アッシュ」
「久方ぶりです、伯父上」
「クリムゾンに似て立派だな、今日は楽しむにしては堅いだろうが、まぁ楽しんでくれ」
「はい」
「そちらのお嬢さんもシュザンヌの子か、高校の時のあれにそっくりだ」

ルカが一礼すると、また一礼返してそこから去っていった。

「大丈夫か」
「う、うん…うちってただのお金持ちじゃなかったんだね」
「父上も母上も知らなきゃ知らないでそれでいいことだと教えなかったからな」
「でも、知らないじゃすまされないよ〜」

バックグラウンドがあまりに大きすぎて妹は半泣きでアッシュにすがる。

「知りたいなら後で教えてやる」
「うん、約束ね お兄ちゃん」

指切りをするとアッシュは父に呼ばれ「後で」とルカに言うと行ってしまった。

「さぁ、私たちも行きましょう」
「うん!」

ルカはナタリアと壁際でひそひそ話をするように、お喋りを続けた。

「はい、飲みものですわ」
「わぁ、ありがとう」

グラスを貰ってまた話に花を咲かせていると、見慣れない男がやってくる。
それに気づいて、ナタリアが秘かに眉を寄せた。

「ご機嫌麗しゅう、姫」
「明けましておめでとうございます」

男はなかなか、しつこくてナタリアを放そうとしなかった。
しまいには、肩を抱いて会場から連れて行こうとする。

「ぁ、ちょっと止め「止めなさいよ!」

ルカがキッと眉を寄せてにらみつける。

「何だ、君は?」
「ナタリアからその手を放して、嫌がってる女性を無理矢理だなんて紳士のすることじゃないわ」
「口のきき方には気を付けるんだなお嬢さん…僕は大臣の息子だぞ」

いやらしい笑みを浮かべる男。

「それがどうしたって言うの?偉いのは貴方のパパで貴方じゃないもの」
「なっ、ふざける、なよっ!」

男がグラスを持っていた手でルカを突き飛ばしたせいでシャンパンを被ってしまった。

「きゃっ!」
「ルカ!っや!お放しになって!!」

騒ぎにざわめき始めた会場。
原因がルカたちだと気づき、アッシュが駆け寄ってきた。

「ルカ!」
「お兄ちゃん…」

来ていたスーツの上着を着せるとアッシュはルカを立たせた。

「まったく、…君、兄ならきちんと面倒みたらどうだ?」
「申し訳ありません…なんて言うと思ったか、カスが!!」

通りかかったボーイから、ワインの入ったグラスをアッシュは持つとその男に顔からぶっかけた。

「テメェの面見て、喧嘩売れ」
「お兄ちゃ、」
「いいから掴まれ」

そういうと姫抱きにし、ナタリアと会場を後にした。

「あ、歩けるよ、アシュ兄」
「っ、一応怒ってるんだからな」
「ごめん、なさい」
「まったく、お前は…」

真っ直ぐすぎるほど、真っ直ぐで。

「こちらに、私の部屋へ」
「あぁ」
「さぁ、ルカはこちらに…アッシュはお座りになって」

ルカとナタリアはバスルームに、アッシュは部屋に設置されたソファに座って二人を待った。

「ごめんなさい、私のせいで」
「謝らないでナタリア、悪いのは男の方よ…それにお兄ちゃんも助けてくれたもん」

幸せそうに笑うルカにナタリアもようやく微笑む。

「私の服を着て、その服はクリーニングにまかせましょう」
「うん!」
「ルカはアッシュのことが好きなのね?」
「もちろん!おうちだとすっごくどうしようもないんだけど…いざっていう時、自分よりも私たちを助けてくれるの」

「アシュ兄は騎士様なんだよ」と彼女は付け加えるとナタリアの服を着た。

「ルカ、帰るぞ」
「え、お兄ちゃんパーティーは?」
「構わない、派手にやらかしたんだ居心地も悪い」
「賢明ですわ、私のせいでこのようなことになってしまって申し訳ありません、アッシュ」
「いや、ナタリアのせいじゃないさ」

そういうとアッシュはルカを連れてホテルから出た。








「大丈夫か?」
「え、うん…ちょっと怖かったけど、お兄ちゃん、かっこよかったよ」

ニコニコしているルカにそこじゃないとツッコミをいれそうになる。
なんだか、朝から調子を狂わせられている。

「ぁ、うっ!」

ぴんっとアッシュの指に弾かれてルカは額を押さえる。

「お仕置きだ、」
「うー」
「まぁ、せっかく時間もできたしお土産でも買いに行くか?」
「行くー!!」

元気よく手を上げた妹を何度か撫でると手を繋いで二人は歩きだした。









それは、元旦の出来事。




END








―――――――――
あぁぁ…長い(;´д`)
やりたかったけど、やれなかったネタ!
この世界は王政なんですか、そうですか。




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