12月31日




「ルク」
「…」

多分、事の発端はルーの事件。
ルーでなく、ルクをたしなめたせいだろうか、それから必要最低限の会話以外していないのだ。

「俺、今日遅いから先寝ててよ」
「え、そんなに遅いの?」
「友達とお宮参りしてくるから遅くなる、じゃあな」

声をかける暇もなくルファークは出ていってしまった。

「いって、らっしゃい…」

こんなに楽しくない、冬休みもあるんだなとルークは一人年越しうどんやそばの準備を始めた。
間違って六人分の分量で作ってしまった辺り、自分でも間が抜けているとしか思えない。

(後でガイにも届けよう)

みんなで過ごさなくなったことに、それぞれ成長したのかなぁとルークは思う。
まるで自分だけ、ここにしがみついている。

(ホントに成長してないのは俺だけ?)

アシュリアに、ガイのところに行くと告げると作ったばかりの麺を持ってルークはでかけた。







「ルーク、悪いな」
「ううん、大丈夫」
「少し上がって行かないか?寒かっただろ?」

ちらりと時計を見ると19時。

(みんないないし、いいか)
「じゃあ、お邪魔します」
「ああ、ペールも喜ぶよ」

ちらちらと雪が降ってきた寒い中でガイの煎れてくれた紅茶はとても美味しかった。

「店、いつから?」
「新年も休まず営業中、ペールじいさんが休まないって言うからな」
「そうなんだ、ガイのお茶美味しい…」
「新しい紅茶なんだ…気に入って貰えてよかった」

にっこりと笑うガイに、ルークはいつも癒される。
親戚関係に辺り、別荘の管理なども行ってくれている彼。

「この紅茶、少しほしいな…いくら?」
「いいよ、お金はいらない…そんなに気に入って貰えたなら分けてあげるから」

そう言って瓶を一つ袋に入れてルークにくれた。

「そばのお礼」
「ありがとう、ガイ!」
「いいや、元気でたみたいだな…安心した」
「うん、もう大丈夫…そろそろ帰るね」

気が付けば二時間も居座ってしまった。
「送っていくよ」というガイに丁寧に「近くだから」と断りをいれてルークは帰り道を歩きだした。
雪が降っていて、お宮参りや飲み会などで人通りはとても多い。

「うわゎ」

気を付けて歩いていたはずなのに、後ろから押され前にいた人にぶつかってしまった。

「いってぇな、テメェ…」

酷く悪酔いしている男は焦点の合わない目でルークを睨む。

「すみません、でした」
「すいません、で済むと思ってんのかぁ、高校生がっ」

完全に怒りが頂点に達した男は手を振り上げて、ルークはとっさに動けずやってくる痛みに耐えようと身を縮こめた、が…その痛みはいっこうにやってこない。
恐る恐る目を開けると…。

「ルファーク」
「人の兄貴に何してんの、おっさん…いい歳こいて酒に呑まれてんじゃねぇぞっ頭冷やしやがれ!」

そのまま腕を引き身を屈めるとルクは男を投げた。
背中から落ちた男は悶絶したまま起き上がることができず、騒ぎを聞き付けた警察に連れていかれる。
一部始終の証言からルクはおとがめなく、厳重注意だけで済んだ。

「ルクちゃん」
「大丈夫かルー兄?痛いとこない?」

ルクに抱きついたままルークはこくこくと頷いた。

「じゃあ、帰ろうぜ…本当は年明けてから帰ろうと思ったけど、やっぱりルー兄いなきゃ、一緒じゃなきゃ、しっくり来ねぇからさ…帰ってきた、ごめんな ルー兄」

「しっかし、体育の柔道も馬鹿に出来ねぇなぁ」とルファークは笑っているが一歩間違えれば、ルクだって大怪我だ。

「、ルクちゃん」
「ん?」
「好き、大好き、ルクちゃんのこと大好き」

自宅前まで来てそんなことを言われ、ルクは心臓がはねあがる。
往来だとか、そんなことはどうでもよくなってルークの唇に口付けた。

「俺はいつだって、ルー兄がピンチになったら助けるよ」
「ありがと…ルクちゃん、まだ年越しには時間があるからお茶飲もう、ガイから貰ったのルクちゃんと一緒に飲もうと思って」
「やりぃ、丁度あったかいの飲みたかったんだよな、」

家族一の紅茶好きのルクはもう一度、ルークにキスすると玄関の扉を開けた。



それは、12月31の出来事。


END





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