12月29日




「ルーク…正月、俺はいないからな」
「え、」
「父上と挨拶回りに行く」
「アシュ兄、いないの?」
「あぁ、明日飛行機でたつから」

リビングでくつろいでいた妹弟たちも「えっ!?」という顔でアッシュを見る。

「アシュ兄、いないのか…」
「お兄ちゃん、準備は?」
「終わっている」
「んん、困ったな…俺とルクはちょっと用事があるんだよ」
「いや、構わない」

見送りはいらないとアッシュは首を振る。

「ぁ、ルカ!ルカが行く!!」

大きく挙手をしたのはそれまで黙っていた妹。

「ルカ…」
「いいよね、お兄ちゃん」
「、ありがとう」

そうして、次の日アッシュとルカは一緒に空港に行くことにした。









「忘れ物ない?」
「ああ、ない」
「兄上、父上と母上によろしく」
「アシュリア、家のこと頼んだ」
「ああ、まかせろ」
「行ってきます」

そう言うとそろってアッシュたちは家を出た。

「ルカ、重いだろう…」
「重くない、もん」

明らかに誰が見ても、アッシュの荷物を一つ持っている妹は重そうだ。
細い腕がぷるぷるいっている。

「ル「いいのっ!こうしないとお兄ちゃんと手、繋げない」

確かにそれはそうなのだが。

「、タクシー使うからそれまで我慢しろ」

そういうとひょいっとアッシュはルカから荷物を取って、タクシーを呼び止めた。

「お兄ちゃ、ん」
「ほら」

後ろに乗り込み、「空港まで」と行き先を告げるとアッシュは手を差し出した。

「ん、」

ぎゅっとその手を握る。
お兄ちゃんこのルカには、誰かが欠けるお正月があるなんて思えなくて、どこか寂しさがあるのをアッシュは気づいていた。

「…」

終始無言。
アッシュだってどうしたらいいかわからないのだ。

「、く」
「ん?」
「ルカもお兄ちゃんに着いてく!!!」
「はぁ!?」
「着いてくったら着いてくの!!!!」
「あのなぁ〜ルカ、俺は別に遊びに行くわけじゃないんだぞ」
「知ってる!!そんなのルカだって分かってるもん!!子供じゃないの!!」

頬を膨らませて言われても説得力はない。

「ルカ、おとなしく家に「嫌!!」
「おい…」
「だって、お兄ちゃんはその間一人なんだよ?確かにパパとママはいるけど…」

上目使いに責められ、アッシュは「うっ」と息を詰まらせる。
大学を出た時の準備を確実にしなければいけないものの、できればアッシュだって離れたくないのだ。

(しかも、自分が寂しいんじゃなくて、俺の心配か)

ルークと似て、鋭い。
外で作る癖があるのをうっすらと気づいている。

「…わかった、一緒に来てくれるか?」
「うん!!一緒に行く!」

頬にさらに紅色がかかり、嬉しそうに笑うルカの額に、アッシュはキスをした。





それは、12月29日の出来事。




END




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